第16話 神の怒り!? リベンジ登山の結末

「神様…どうか中田君の悪行をお許し下さい」

 …金堂君と池戸君と私の3人は阿夫利神社(奥社) にそう唱えながらお賽銭を入れてお参りしました。

「中田っ !! お前もお参りしろ… !? 」

 金堂君がそう言いかけて後ろを振り返ると、当の中田君は神社の狛犬の片目に10円玉を挟んで、

「※丹下段平犬だ、アハハ~ !! 」

 と、おバカにはしゃいでいました。

(注※=漫画あしたのジョーのキャラクター,ジョーのトレーナーで片目にアイパッチ姿)


「中田君 ! …キミには絶対に神様の祟りがあるよ!」

 3人にそう言われてもなお彼は、

「俺は何ぴとにだって負けないぜ!よぉし、神様ドンと来~い !! 」

 と全く無礼千万極悪非道、天に唾する悪態を晒していたのでした。


 …散歩の後はみんなでテントに戻り、朝食用に昨日登山前に買っておいたパンなど食べて寛ぎました。

「そうだ!ホットコーヒー飲む?」

 テントの中で金堂君がそう言うと、

「おぉっ!良いねぇモーニングコーヒー!飲む飲むっ !! 」

 みんなはそう言って喜びました。

 …実はこの登山キャンプのために金堂君はアルコールコンロ&ケトルのセットを用意していたのです。

 みんなの期待の中、テントの中央にコンロを置き、ケトルでお湯を沸かしてカップにインスタントコーヒーを淹れ、笑顔で

「出来たよ!」

 と金堂君が池戸君に手渡そうとしたその時 !!

 突然惨事は起こりました。

 何とケトルの取っ手にコツンと金堂君の膝が当たり、テントの中に思いっきりひっくり返ったケトルの熱湯と手にしたカップの熱湯がぶちまけられたのです!

「わーっ !! 」

 一斉にみんなの悲鳴が上がり、テント内は一瞬にして湯気でスチームサウナ状態になりました。

 パニックの中、男たちが慌てて外に脱出する際、テントの支柱が倒れてあっけなく寛ぎ場所はペシャンコに潰れてしまったのです。

「……… !? 」

「………… !」

 靴も履いてない状態で、四人は山頂に呆然と立ち尽くしたのでした。

 …それでも金堂君は脱出時、とっさにコンロの火だけは消したので物損や焼失はありませんでしたが、結果として池戸君が右膝に熱湯を受け、金堂君は右足の甲から足指にやはり熱湯がかかって火傷を負いました。

 一方、いち早く外に逃げた中田君と、たまたま池戸君から離れた位置にいた私は無事でした。

 …仕方なく四人は潰れたテント内を片付け、道具一式をたたんで下山の仕度に入りました。


 …それぞれ荷物を背負って登山道を下り始めると、やはりしばらくして火傷した池戸君と金堂君の足や膝がヒリヒリじんじんと痛み出しました。

「足が痛いよぉ…!」

「膝がヒリヒリするよぉ…!」

 下山途中、苦しさに泣きが入る2人に中田君は、

「どうやら神様の怒りは君たちに向いたようだねぇ、可哀想に…」

 と他人事のように言いました。

「くそ~、ムカつく~ !! 」

「理不尽すぎる~ !! 」

 2人は顔をしかめて叫びつつ、ヨレヨレと山道を辛そうに下りました。


 …という訳で金堂君の大山リベンジ登山は結局今回もまた悲惨な目にあって終了ということになりましたが、

「キャンプ登山って楽しいなぁ!また来ようぜ !! 」

 中田君だけが最後まで足取りも軽く、元気いっぱいなのでした。





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