第4話 キセキのはじまり

 ㅤ一週ほど経って、選択授業が始まった。太陽の授業は晴れた日の運動場で受ける。土や芝の匂いをかぎながら、まず座って話を聞く。運動場の真ん中にホワイトボードが出されてる。


「お前たちが身につけようとしているのは太陽のチカラ。いずれ手から炎が出るようになるが、学ぶのはそれだけではない!」


 ㅤ話を要約すると、「底抜けな明るさ」を覚える必要があるらしい。ただし明るさを他人に強要するようなことはせず、自らが光を発することで周りを明るくしろと。


 ㅤそれでどうやって手から炎が出るのかわからないけど、すでに陽太は手の上でチチチチとコンロの火がつく直前みたいな音がする。これが適性か。ぼくはまだ何もできない。チラッと見たところ願もできてなさそうだ。おまけに口にマスクをつけてる。まだ風邪が完治してないのかな。


「炎はそう簡単に出せるものではない。しかし出せないと諦めてしまってはずっと出せないまま。そんなの"ダッセェ"だろ?ㅤハッハッハ」


 ㅤ先生がのけぞるくらいに笑った。確かに簡単に出せそうにない。


 ㅤ明くる日。以前から言われてた席替えをすることになった。そもそも最初の席の決め方はいい加減で、教室についたものから順番に決められた。ぼくは学校に行く道を迷ったにも関わらず一番に到着したので、一番前の席になった。今では気に入ってるから良いけど、今度はくじ引きで決めるという。何でだ。


 ㅤ疑問に思ったとはいえ、文句を言うほどでもなく、くじを引いた結果。ぼくの席は何とこれまでと変わらなかった。これってどれくらいの確率なんだろう。奇跡?ㅤ変わったことはと言えば、隣の席が陽太から願になったくらい。

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