ウィルについて(第47話まで読破推奨)


 我らが王様、ウィルがやって参りました。

 物語に出て来なかった裏話も出てきます。ようやく裏話っぽいお話に。


 初登場時、まさかの王様とは誰も思わなかった様です。内心「やったぜ」と思いました。

 でも、実はそこまで驚かれるとも思っていませんでした。王様というか、魔王とか勇者(国の王)とか書き過ぎて、感覚が麻痺しているのかもしれません。

 さらっと普通に出してしまう王族……。気軽に出し過ぎなのでしょうか。


 さて、ウィルです。いきなり読破推奨レベルが上がりました。


 ウィルの名前は、結構あっさり決まりました。私、ウィルっていう名前が好きなんです(そんな理由)。

 本名を作中に出せませんでしたが、「ウィスタリア」と言います。



 ウィスタリア・ウィストラフィルです。



 何とも言いにくい名前ですね。流石私です。考えなしです。

 ウィスタリアは、弟の「タリス」に少し寄せました。


 ウィルは、王族に生まれるべくして生まれた感じの人柄です。

 国を治めることに何の疑問も無いけれども、その代わり感情の一部分が欠如した、人としては不完全な人です。

 恐怖をあまり感じない、喜びもそこまで湧かない、結構感情面が薄い人です。故に、冷静に残酷に判断が下せる人物でもあります。


 だからこそ、強い感情を抱かせてくれる弟のタリスがとても大切でした。


 幼き頃のウィルにとっては、彼といる時が唯一幸せを感じるひとときでした。

 ウィルと違って、くるくると回る表情や直情的な言葉や感情。弟といると感じられる人としての熱が、ウィルを唯一人に戻してくれる貴重な時間でした。



 タリスを失った時の悲しみと絶望は、きっと誰にも分かりはしない。



 ウィルは今でもそう思っているし、それを見せようとはしません。当然ステラにもです。

 ステラはウィルと似ていて、感情というものをよく分かっていない部分がありました。

 タリスといて、彼女が少しずつ感情の揺れを学んでいる様に見えたウィルは、彼女に勝手に親近感を持ち、秘かに応援しておりました。

 まるで、もう一人の自分を見ている様な気分になっていたのだと思います。

 彼女とタリスの恋が上手く行けば、自分も少しは人としての希望が持てる。そう思っていた部分もあります。



 ですが、それも無残に壊されました。



 ウィルは犯人である父を葬り、王になります。この時に一度、人を完全に捨てました。

 自分は、もう二度と人としての熱を、感情を持てはしない。人には戻れない。

 けれど、ステラが「死にたい」と言った時、彼は生きろと言いました。

 恐らく自分を重ねていたステラが死んだら、本当の意味で後戻りできないとウィルも無意識に分かっていたのだと思います。


 結構悲惨で空っぽな時に、今の妻と出会いました。

 強い彼女に出会い、言葉を交わし、救われ、手放してなるものかと求めました。彼が生まれて初めて、自ら求め、動いた相手です。それはもうラブラブです。

 現在、ウィルは妻やエルスターといる時だけが、人に戻れる幸せな時間となっています。彼の救いです。


 そして、もう一人の自分であるステラにも幸せが掴めそうな時がきたからこそ、ウィルはリヴェルを何としてでも生かそうと決めました。


 ステラとぶつかり、叱り、感情をぶつける姿は、かつてのタリス以上に真摯でかつ不器用に見えたことでしょう。

 命を誰よりも大切にし、諦めずにステラに語りかけることをやめなかったリヴェルを、実は秘かに尊敬していました。ウィルには無かった情熱です。

 可愛がっていたエルスターの親友であるので、ウィルは結構リヴェルを贔屓ひいきしています。この上ない感謝もしています。


 王族が魔法使いに対抗する秘術である、弟の形見の懐中時計。


 それをリヴェルに渡して良かったと、ウィルは命尽き果てる時まで後悔しないことでしょう。

 いつか、長い命の旅を終えた時に、もう一度タリスと出会って笑えることを願います。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る