第11話 遊園地その1

「着いたぞー、遊園地!」

 無事に一学期を終え、夏休みに入り、とうとうこの日がやってきた。誰一人欠けることなくこれたことに喜びを感じる。皆は園内マップを見ながら、各々行きたい場所を話し合っている。遊園地なんて、きたのはいつぶりだろうか。それこそ、最後にきた時には、まだ父さんが生きていた時かもしれない。

「ねぇねぇ、市埜くん何乗る?」

 村田が、目を輝かせながら園内マップを俺に見せる。

「そうだな、このお化け屋敷なんかどうだ?」

「お、お化け屋敷か……」

「村田苦手なのか?」

「う、ううん、そんな事ないよじゃあ、お化け屋敷行こうか」

 微妙な反応の村田に一抹の不安を抱えながら、俺たち一行はお化け屋敷に行くことにした。

「なぁ、全員で一気には無理だからペア作ろうぜ」

 池端の提案にみんなが賛成したので、くじ引きでペアを決めることになった。みんなくじを引いていく。

「じゃあ、決まりだな」

 俺は、戸成と、村田と同じペアになった。そして、とうとう俺たちの番が回ってきた。

 古い廃病院が舞台なようで、一歩中に入ると、仄暗く、不気味な空気が伝わってくる。一本道を歩いていると、奥の方から物音が聞こえたり、病室の明かりがついたりしている。何かが起こるたび、左隣にいる村田の肩はビクンと跳ね上がる。

「おい、村田大丈夫か?」

「ぜ、全然大丈夫……ヒッ!」

 どうやら、通路を抜け、ひとつの部屋にたどり着き、その部屋の床には血を模した赤い液体が広がっており、水音にびっくりしたらしく、村田は驚いたようだ。それに、その部屋は、手術室だったようで、生首の模型や、腕、脚といった四肢のパーツが転がっていた。

 戸成を見ると、割と平気そうだった。

「なぁ、戸成はこういうの大丈夫なのか?」

「うん、まぁね。本物がでても驚かないと思う」

 そう言う戸成の声はどこか寂しげで、遠くを見るような感じだった。

 そろそろお化け屋敷も後半に差し掛かってきたらしく、仕掛けも迫力を増していった。それに比例するように村田も怖がった。

 最後の通路に入り、少し先に出口が見えた。出口に向かってゆっくりと歩いていく。すると、出口の直前で、横から、死体の模型が倒れてくる。

「うわっ」

「あぁぁぁ」

「ヒッ」

 村田は当たり前として、俺も戸成も、さすがにびっくりした。すると、右にいる戸成が、俺の腕にしがみついていた。今までそういう目で見たことは無かったが、顔が近く、いい匂いがする。

「お、おい戸成大丈夫か?」

 動揺のせいか、少しどもりながら声を掛ける。

「うん。あ、ごめん」

 今の状況のまずさに気づいたようで、即座に離れる。

 無事にお化け屋敷を出て、みんなと合流する。みんな口を合わせて最後の死体の模型が怖かったと言う。それを聞くたびあの光景がフラッシュバックした。



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