第6話 全てに決着を root零矢

 翌日に緊急でクラス会議を入れた。

 グルの人間を捕まえたこと。

 先生が裏切っていたこと。

 全てを説明した。

 受け入れられない生徒もいた。

 悲しむ生徒といた。

 だけど、

「こんな時に遅刻する奴がどこにいる!!!」

 俺は一人でノリツッコミをしていた。

「まぁ落ち着いて。そういう事だから各自で制作した小説を持ってきてくれ。では、解散。」

 解散と同時に予鈴が鳴った。

 数分後、先生は笑顔で教室に入って来た。そして元気よく、

「おはようございます!!」

(こいつどんな心臓してんだ?)

 俺は真剣に先生の正気を疑った。

 俺だけじゃない。クラス全員疑っている。だが先生は臆することも無く

「皆さんスマイルスマイル。」

 本当にイかれていた。

「昨日の今日で良く言えますね。」

 意外にもヒョウが最初に先陣を切った。

「?多分皆さん勘違いしてますよ?」

『はい?』

「多分その人間は、私ではないです。」

『は?』

「多分、皆が言っている存在は

 この高校の理事長。そして、私の双子の兄です。名前は遅宮丈瑠と言います。」

「誰が信じるんだよ。そんなの。」

「信じるさ。私を見れば。」

 声の方を向くと先生に似た人間がいた。

「兄さん。うちの生徒にちょっかい出さないでくれる?」

「面白いこと言うな。ただここを通りかけただけさ。では失礼。」

 ニコッと笑顔で遅宮丈瑠は去っていた。

 クラスは沈黙の渦に包まれた。

 だって…ねぇ?…

 勘違いしてたんだもん!!

『すいませんでした!先生!!』

「いえ。怒ってないですよ。それに勘違いによって得たものが大きかったですよ?団結出来たじゃないですか。」

「ですが。」「先生に…」

 しかし、一時間目の五分前になった。

「ほら授業が始まるよ。席に着いて。始めてのライトノベルの授業ですよ?楽しむことを考えましょう!」




「んっ。れっい…や。もっと優しく揉んで。はぁはぁ。はげ…し過ぎるよ。アッっ…ンン。私そこ弱いの…」

「苺。お前本当におっぱいでかいな。揉むたびに、弾力が伝わってくる。」


 はい。何故こんなことをしているかというと、以前にも言った通り。取材です。今おっぱいを揉まれたヒロインと主人公の気持ちを確かめている。

 事の発端は、授業前の山下さんの電話だった。


「もしもし。」

『あっ。もしもし笑笑。山下大輝です〜。最近大変そうですね〜。なんたって苺ちゃんが記憶喪失になってしまうとわ。でも、イラストレーターとしてやっていけそうだから、よしっ。』


「何の用ですか?学校なんすけど。」

『君に情報を提供する。あと決着つくまで仕事は考えなくていいよ。』


「わかりました。ありがとうございます。でも学校なんすけど。早くしてください。情報ってなんですか?」


『もぉ。何度も言わなくても知ってるよ〜。実はトップクラスの人達は君達の実力に劣るという事だね。』

「どういう事ですか!?」


『彼らは、本を書くことの技量は無い。でも人のことわりをはずれた能力がある。例えばこの前の紫陽花さんとかね。』

「結局何が言いたいんですか?」

『もしその能力を封じられたら?』

 その発言に俺は目からウロコだった。

「流石大輝さん。僕にも理解出来ました。」


『分かったか〜。良かった。ではまず苺ちゃんのお胸を揉んでみよう。』

「すいません。やっぱ意味不明で…」

「私のお胸を揉む?いいですよ。」

『苺ちゃんのオーケーもでたし。

 ほらクラスメイトをみてみ。』


 振り向くと、ヒョウがニヤニヤして掛け声をかけた。


「皆んなー!!胸を揉ませたいか!」

『揉め揉め揉め揉め揉め揉め揉め揉め揉め揉め揉め揉め揉め揉め揉め揉め揉め揉め揉め揉め揉め揉め揉め揉め。』


 男女満場一致の揉め揉めコール。

 そして現在に至る。

「はぁん。ミルクでちゃいます。もぉ限界ですっ!!」

「まだだ!!お前は限界を超えれる!!」

 完全に我を忘れていた。だが、

 慌ててクラスの男子が止めてくれたおかげで先生が戻ってくる前に

 おっぱい揉み揉みタイムは終了した。

「では、ラブコメについて今日は学びます。ラブコメとは様々なヒロインと主人公の種類があって……」


 先生の説明は延々と続いた。

 授業が終わり、屋上に向かった。

 屋上で外の風に当たりながら知らぬ間に先生の説明を思い返していた。そんな中で一つ俺の心に響くものがあった。それはツンデレ。

 以前の苺がツンデレ系ヒロインにとても似ていた。

 だけど、こいつはツンなのかデレなのか俺には、分かりづらかった。


 …!!俺はこいつの気持ちを理解していなかった。だからあいつはあの時の喧嘩で俺を底辺と呼んだ。

「苺。俺はやっと分かったぞ。」

 そう。それは、

「エロって大切なんだなぁぁ!!」

 残念ながら、まだ勘違い主人公でした。

 俺は、教室に急いで戻った。

 机に座り。得意の速筆で久々にラノベを書いた。ラノベとは作者の夢と読者の夢の合作。読者の気持ちを理解した俺は今やっと苺に並んだ気がした。


「皆んな見てくれ!」

「ん?どうした零矢?」

「書けたんだよヒョウ!トップにも勝てるラノベが!」

「えっ。凄いじゃないか!見して!」

「ほら!」

 心底嬉しみながらヒョウに渡すとヒョウの顔が歓喜に溢れた。

「これなら勝てる!皆んな見ろ!」

「どれどれ。」「これは…」

 クラスメイト皆んなの顔も喜びに満ちた。

 あとは、苺のイラストだな。

「苺!どうだ出来たか?」

「零矢!私もさっきのおっぱい揉み揉みタイムで分かったの!見て!」

「こっこれは!何?」

「くらえ!ゴム付き◯EXカリバー!!」

「バカ!なんてもん書いてんだ!」

 ゴチんっ!

「何が聖剣セッ◯スカリバーだ!」

「…は?キモ。女の子に下ネタ言うとか変態もここまでくるとマジ引くわ。」

(えっ?)

「何この教室。私はトップクラスなんだけど。」

「苺だよな…。」

 俺は涙が出てきた。

「何?私がいないと…きゃっ!」

 俺は苺を抱きしめた。もう離さない。

 良かった。本当に良かった。

「そっそういうの。恥ずかしいんだけど。」

「もう二度と離さないぞ苺。」

「ふん。成長したわね。」

「勿論だ。(ドヤっ」

「これで私はあなたのイラストレーターを心置きなくできるわ。」

「え?お前小説は?」

「あなたは今、私を超えた。私は零が取材の大切さを知る事が出来たら勝てないと思ってた。決めてたの小学校六年生の時からあなたのイラストレーターになるって。でも先に私が作家になっちゃったからあの時酷い事を言ってしまったの。

 まだ諦めてないの?惨めねって。

 でもそれから毎日作家をやりながらあなたのイラストレーターになるため努力したの。」

「今まで俺。お前のこと勘違いしてたよ。ありがとな。」

 俺は満面の笑みを浮かべた。

 こいつがこんなに優しくて努力家だったことを俺は知れて嬉しい。

 今なら学園トップも夢では無い。

「よし!明日が決着だ!苺やるぞ!」

「決着?何のことよ?」

(そうだ。こいつにまず一から説明しなきゃいけないんだった。)



「ふーん。面白そうね。私が下なのは許せないけど、下克上は楽しそう。」

「いや。下じゃない。明日にはトップだ。」

「乗ったわ。やってやりましょ。」

「おしっきた。初めてのコンビ作品だな。気合い入れてくぞ!」

 そしてクラスメイト達にも…。

 あっ。皆んなこっちを見てニヤニヤしている。

「お前ら良いカップルだな。」

「負けたでやんす。ぽれも零矢くんねらってたのに。」

「ホモもカップルも勘弁しろよ。そういうのじゃないから。なっ?苺。」

「そうよ。」

 だがヒョウが冷やかす。

「でも塔堂さん顔真っ赤だぞ。」

「えっ?!顔赤い?頭の中も真っ白なのにそういうこと言わなで!」

 中が白くて外が赤いって、

「本当の苺かよ。」


 ーーー翌日ーーー

「これよりA組対Z組のラノベ対決を始めます。司会は理事長の遅宮丈瑠が務めさせて貰います。では、代表者二人前へ。」

 Z組。俺たちのクラス代表は

 柳原ヒョウと葉羽零矢の二人だ。

 A組の代表は、久方紫陽花と山下美和だった。

「負ける準備はよろしくて?」

「ほざけ。テメェらこそ覚悟しろ。」

「そういうこと。(ヒョウの口調荒いなぁー。)」


 しかし、会話中に紫陽花はある事に気がついた。

(この人達…感情が読み取れない!)


「ではA組の方発表宜しく。」

「はい。発表は久方紫陽花がさせて貰います。」

 紫陽花はもの凄い自信が溢れている。

 それと同時に震えていた。

 心を読むことが出来ない事に。

「私達の作品は。いえ。私の作品のタイトル。《選択に迷ったら膝の上》です…」

(私の作品?クラスでの作品じゃないのか!?)

「この作品のあらすじは、困ったらある女の子の膝の上に乗るという主人公でその行動からクラスの嫌われてしまい、行動を改めて、クラスに償いをしていきある女の子に恋をしていくストーリーです。」

 理事長の反応は…ん?不満か?


「うん。とても良い構成だね。特殊な設定に面白さを感じたよ。でも一人で作ったのかい?」

「はい。ここはむしろ良いとこではありませんのか?」

「そうだね。良い作品をありがとう。では、次Z組宜しく。」

『はい。』


 俺とヒョウは同時に返事した。

 しかし二人はある事に気付いていた。

 理事長の顔が歪みに歪んでいた。

 まるで悪魔の様な笑みを浮かべていた。頭から危険信号がでていた。

(この人間危険だ。黒幕もこいつだ。)

 そう思っていた所為で身体が動かない。だが理事長に構って動かないでいたら何も始まらない。

《勇気を振り絞れぇぇぇぇ!!!!》

 俺は席を立った。

(ほぉ。私に怯まず動きましたか。)

「俺たちの作品のタイトルは《感情の咲いた花》です。あらすじは、無感情で人の心が理解出来ない主人公が神の言葉により転生して、少しずつ異世界で心を咲かせて最後は花の様な満面の笑みを浮かべるストーリーです。

 アピールポイントは…。」


 パチパチパチパチ。

 なんだ?何故拍手が?

「うんうん。素晴らしい。実に面白い。作品よりも君たちの考えが。」

「はぁ?何が言いたいんですか?」

「作品では負けていた。が、考え方を図るのが今回のポイント。というだけさ。」

 俺は間抜けに驚愕していた。

「!聞いてません!理事長!」

 納得いかないのか久方紫陽花は口を挟んだ。

「残念だったな。しっかり反省しろ。A組の恥だ。」

「くっ…!何故…。私達の作品が上なのですよ!」

「そこだよ。考えがおかしい事に気づけ。」

 不満そうにも久方紫陽花は退いた。


「では、発表します。今の結果…

 タイトル《感情の咲いた花》


 Z組の圧倒的勝利。」

『勝った…』『やったっっっ!!』

「作品は負けていたが勝ちは勝ちだな。」


「…なぜです。能力もないあなた達が何故っ!!この試合の意図を汲んでいたの!」

「答えは簡単だ。能力だけじゃ勝てないってことよ。」

「はっ?」

「協力だ。皆と協力することをしなかったお前は作家失格ってことだろ。

じゃ俺たちの要求忘れてないよな?」

「えぇ。いつ…でもどうぞ。おっ、女としての覚悟は…出来てます。」

「では要求させて貰う。この学校の身分制度を緩和し、見下す風習を廃止しろ。」

「いっ、いいのですか?そんなことで?」

「そんなこと?かなりのことだぞ。」

「あっあなた達は一体??」

『俺たちは只のZ組だよ。』

 ヒョウと零矢は口を揃えて一言添えた。

「…それがあなた達の強さですか。」

「勘違いするなよ。まだ勝負は終わってない。作品では負けていたんだ。今度は勝つぜ。高校生活が終わるまでが勝負だ。共に切磋琢磨しようぜ。A組さんよ。」

「その通りだね。僕達いつでもリベンジ待ってるから。」


「全くお人が良いです。」

 紫陽花さんはフッと笑い去っていった。

「やぁ。流石だね〜。兄さんも君の成長に喜んでるよ〜。」

「美和ちゃん。大輝さんにありがとうって言っておいてくれるか?後日こちらもお礼しに行くから。」

「わかった〜。」

 こうしてA組とZ組双方課題を見つけて、勝負は幕を下ろした。



「結局誰が苺を襲ったのかな?」

「まぁいいわ。記憶は戻ったし。」

「なら、いいけど。それより明日から平凡なラノベ作家に戻るんだな!」

「二人でラノベ界の頂点を取る約束忘れてないわよね?」

「小学校のときのか。」

「そっ。明日から忙しくなるわよ!」

 ようやく始められる高校生活。

 俺達の伝説はまだ進み始めたばかりである。





「ただいまなのー。」

「お〜。美和!二人の成長はどうだった?」

「ひとまず一人前レベルになった

 よー。二人共。」

「ごめんな〜。兄ちゃんの汚れ仕事させて。」

「楽しいからいいのー。兄ちゃんも無理しないでねー。」

「ありがとう美和。でもこれで、やっとラノベ界一位を目指せるかもしれないよ〜。」

「そういえば、兄ちゃんの能力を封じるって真面目に言ってたの?」

「半分真面目。半分遊び。」

「性格悪いねー。」

「よく言われるよ〜。くくっ。」

 だが裏では、山下兄妹の計画も進んでいた。


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