第21話 どうしちゃったのかな?

「ねっ? 着替えといでよ」

「うん」


 優香さんを半ば強引に着替えに向かわせた。

 土産物屋さんが親切にしてくれて僕のジャケットや優香さんの濡れたコートをドライヤーで乾かしてくれるという。

「ありがとうございます」

「彼女さんかい?」

「ああ。はい」

「べっぴんさんだね」

「はい」

 土産物屋さんの従業員の方はうちの母親ぐらいの年齢の女性が二人いて、僕たちに熱いお茶を淹れてくれた。

「ありがとうございます」

「急な雨だったねえ」

「はい」

 親切だ。とても。

 店の方々の厚意がありがたい。

 

 僕は店内を歩いて今夜の酒のツマミを探した。こんなに親切にしてくれるのだもの。お返しのつもりもあった。


 僕はツマミになりそうなお菓子や珍味を手に取り鎌倉ビールの三本パックを手にした。

 買ったら荷物がいっぱいになってちょっとウキウキした。

 あとで優香さんの分も買おう。

 優香さんは何か欲しいものはあるかな?


 優香さんが着替えて出て来たから入れ代わりで僕は着替えに事務所に入る。

「待っててね」

「うん」

 優香さんが少しだけ笑ったから僕は嬉しくなったし安心した。


「ねえ。お願いごと。聞いてくれるかな?」

「良いよ」

「明日も恋人ごっこしてくれる?」

 優香さんの僕を上向きに見つめてくる顔が可愛い。

 潤んだ瞳が僕の心をとらえて離さない。


「もちろん。良いよ」 

 ニコリと優香さんに微笑むと優香さんもやっとにっこりと笑った。

 

 僕はどうしたのかな?

 どうしちゃったのかな?

 優香さんに「明日も恋人ごっこしてくれる?」って。

 そう言われてすごく嬉しかったんだ。

 

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