第16話 僕らは江ノ島に歩いて行く

 二人を乗せた電車は江ノ島駅に着いた。

 江ノ電から僕と優香さんは降りた。

 僕たち二人の手は固くずっと握られたままだ。


 僕はだんだん優香さんに親しみを感じ彼女を守りたいとすら思った。

 恋に似た想いを僕は優香さんに持ち始めていてこの手を離さないでいたいと思った。


 江ノ島まで歩く。

 僕は優香さんに自然と歩幅を合わせている。

 そうだ。

 のんびりと歩く琴美に合わせていたことを思い出していた。

「ねえ」

「んっ?」

 僕と優香さんの二人は自然に笑い合っていた。

 優香さんもちょっとは楽しんでくれているのかな?

「あとでして欲しいことがあるの」

 優香さんは恥ずかしいのか顔を赤くして僕を見つめた。

 なんだろう? して欲しいこと?

「僕に出来ることならなんでもするよ」

 口からサラリと出てくるセリフは本当に僕のものだろうか。

 知らない誰かの言葉のように口から出た。

 僕は普段はとても言えないちょっと照れくさいことだって優香さんになら言えそうな気がしていた。


 江ノ島大橋を歩いて行く。

 僕らは眼前に広がる海を見ながら少し遠くの江ノ島を目指していた。

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