第9話 泊まれますか?

 ガラガラっと宿の引き戸の入り口の扉を開けると誰もいなかった。

 外観どおり宿の建物のなかもさほど広くはなかった。


「すいません」

 誰かいるかな?

「いらっしゃい」

 奥の方からしゃがれた声が聞こえてきた。

 小さなおばあちゃんが割烹着を来てゆっくりと現われた。

「泊まりかい?」

「はい」

「一人だね?」

 おばあちゃんは優しく僕に微笑みかけながら、宿帳簿とボールペンを受け付けの小さなカウンターから取り出していた。

「はい一人です。泊まれますか?」

「ああ。泊まれますよ。晩御飯と朝食はつけますかね?」

「はい。お願いします」

 僕はそうして「恋結びの宿」に泊まることとなった。

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