春のバルーン

北側にある庭は寒々として

日蔭の草花は朽葉に覆われ

もう少しばかり

暖かくなるのを待っています


一番手はいつもムスカリ

彼女の花言葉は 失意、失望、

それに悲嘆


さんざんな彼女がこの庭では

一番に生まれ変わります


彼女は望んでいるのでしょうね


今はこんなに冷たい季節でも

私がここを温めてあげる


私は希望を膨らませます


ほら、私の姿見えますか

むらさき色のバルーンのように

私は希望を膨らませます


花たちには聴こえているの


私の鳴らす鐘の音が

チリン チリン チリリンと


ほら、早く早くみんな早く

和らいだ風が撫でてくれるよ

私の希望を叶えてくれるよ


あの空と同じ色に

この星と同じ色に


私の希望を叶えてくれるよ


私は決して嘆いたりしないの

土も 風も 雨も 日差し

みんな私を厳しく育ててくれる


私は失意なんて知らないの


私は望みを失ったりはしない


嘆くコトバを知らない花なの


さあ、もう少し

もう少しで スプリング

落ち葉の覆いをはねのけます


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