人生脱落者と二つの禁書

縁の下 ワタル

第1章 少年は現実を拒む

プロローグ 異世界に行きたい

そう思ったのはネット小説にはまっていたときだろう。

自分も異世界に行って新しい人生を歩めたら、どんなにいいだろうか。

こんなクソみたいな世界から抜け出して、違う世界で過ごせたらどんなに良いだろうか。

考えただけで身震いがしたが、本気で行こうとは考えなかった。

そうしなかったのは、まだこの世界との繋がりを断ちたくないと思っていたからだ。


友人、家族、将来、希望ーー

それらがあったからまだこの世界に留まってもいいと考えていた。


しかし、高校受験に失敗した俺に、それはもうない。

家族からは見放され、将来は霧散し、希望は朽ち果て、友人も、もうゴールが見えているかのように走っていき、自分はそれを後ろから……ただ後ろから眺めることしか出来なかった。


だから、俺はこの世界からいなくなることを決意した。

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