第4話 遺影について

お題:写真、起承転結を崩さずに五百文字以内


ぼくは写真に写るのが好きではありません。では嫌いか、と言うと少し違う。要はどんな顔をして良いのかわからないのです。太宰の人間失格を気取るわけでもなく、ただ顔面神経痛でも患っているのかしらん、と思うほど顔が引き攣ってしまう。無愛想だと言われても笑っているつもりだからね。昔、虐められたことや容姿への自信の無さが染み付いてるのでしょう。


仕事柄、よく人の写真を撮りそれが遺影に使われたりします。さて、もしぼくが遺影を必要することになったらどうするのか。あんな顔面神経痛を遺影におさめるというのは、死後とはいえ、なにやら申し訳ない心持ちになります。


どうしたものか、と数日考えてみたら祖父の生真面目な顔が浮かびました。父が幼い頃に亡くなったので写真がなく、叔母が鉛筆で描いた絵が祖母の写真の隣に飾られているのです。あぁ、似顔絵にしよう。描いてもらうのに緊張するでしょうが、写真よりも面白味がある。


これから行く先々で似顔絵を描いてもらえば一枚ぐらいはマシなものがあるのではないか。選びぬく一枚も笑ってはいないだろうけれど、まぁ、ぼくらしいと笑う奴もいるのではないかと思ったりします。

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