あの日の再現


―――


 遥さんに連れられて来た所は、皮肉な事にこの間拓也さんと来たファミレスだった。


「何、頼む?」

「あ……えっと、私はパスタで。」

「じゃあ俺も同じので。」

「畏まりました。」

 ウェイトレスの人が私達の注文を聞いて奥に入っていく。私は何故か肩に力が入っていた事に気づいて、ゆっくりと深呼吸をした。


「あのさ……千尋ちゃんって彼氏とかいないの?好きな人はいるみたいだけど。」

「え?」

「いや、だからさ……その、急にこんな事言うのもあれなんだけど。俺千尋ちゃんが好きなんだよね。」

「……へ?」

 思いがけない言葉に動きが止まる。心臓も一瞬止まったようだった。そんな私を見た遥さんは少し慌てながら続ける。


「ビックリさせちゃったみたいだね。ごめん……でも本気なんだ。考えてくれないかな?」

「で、でも私達そんなに話した事ないし、遥さんにそう思われてたって事も何か信じられないような……」

「そうだね。確かにサークルは一緒でもあまり話した事なかったけどさ、俺達実は……」

「ご……ごめんなさい!私……」

 勢いよく顔を上げる。その瞬間、遥さんの真剣な目と目が合った。

「あっ……」

 この間、ここで拓也さんが新しい学校に行くって言った時の顔に似てる……


 何で……?何でこんなに似てるの?どうして……


「私……彼氏いるから……」

 堪らなくなって立ち上がるとそうポツリと呟く。遥さんの顔は恐くて見れなかった。

「ごめんなさい……」

 もう一度謝ると私は振り返って走り出した。その拍子にコップから少し水が溢れたけど、目もくれずに店を出た。


 それは一週間前の光景とあまりにも似ていて、嫌でも拓也さんの事が頭に浮かんだ……




―――


 その日の夜、私は拓也さんに電話をかけた。


「もしもし?……何だ、留守電か。」

 まだ学校が終わってないのか、留守電になっていた。すぐに切ろうかと思ったけど何かモヤモヤしていた私はその勢いのまま、留守電にメッセージを入れた。


『会いたい、です……』


 そう一言だけ残して電話を切った。ついでに電源も消してバッグの中に放り投げると、思い切りベッドにダイブした。




―――


「ただいま……」

 高崎は夜遅く帰宅した。真っ暗な空間に自分の足音だけが響く。まだ慣れない部屋に戸惑いながら電気をつけると、ネクタイを緩めてベッドに座る。


「はぁ~……疲れた。……ん?留守電にメッセージが入ってる。誰だろう?」

 カバンの中で点滅しているスマホを取り出して履歴を見てみる。千尋からだという事に気づいて慌てて耳に当てた。


『会いたい、です……』


 高崎の顔がみるみる青褪める。明るく元気な千尋が滅多に出さない、本当に不安になった時の声だった。鼻声だったから泣いていたのかも知れない。


「千尋!!」


 そう叫ぶと、そのままの格好で外に飛び出した。



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