第5話 晩餐

言われた通りに、クローゼットの中の服を着て身嗜みを整えてしばらくして、セラスが夕食に呼びに来た。


屋敷の廊下を歩きながら思案する。

話を軽く聞いた限りでは、今この屋敷にいるのはノースオウル伯爵と伯爵夫人、そしてその三女 ニーナ・ノースオウル様だけだそうだ。

伯爵達には、俺の境遇は話してあるらしい。


他の息子、娘たちは帝都で仕事をしているらしく、三女 ニーナ・ノースオウル様も休暇で訪れているだけだそうだ。

そして、そのニーナ・ノースオウル様が屋敷の地下室に倒れていた俺を見つけ、客人として扱うことを決めてくれたらしい。


下手すればその場で曲者として殺されていてもおかしくなかったらしいので、ニーナ・ノースオウル様には感謝しなければならない。ならないが、だからといって晩餐を共にするというのは自分には荷が重いのではなかろうか……



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食堂に到着した時には既に伯爵と伯爵夫人、そしてニーナ様は席に着いていた。

そして俺は目を奪われた、茶髪碧眼のオジサマと金髪碧眼の美人が二人。

おそらくだが、一番手前にいる、金髪を縦ロールにした美少女がニーナ様だろう。

遅れたことを一言断ってから席に着いた。


席に着くとさっそく伯爵が話しかけてきた。

「イオリ君、だったね。いつまでも、という訳にはいかないがしばらくはうちにいるといい。良ければ仕事の斡旋もしよう。」


威厳のある見た目だが、優しい伯爵のようで良かった。


「お気遣いありがとうございます。早くこの世界に慣れるよう頑張ります。」


「そう焦らずとも、ゆっくり慣れるといい。」


伯爵と会話をしていると、

「お父様、その話少し待っていただけないですか。」


「どうかしたのか、ニーナ。彼に支援するのは必要だろう?」


「ええ、その支援を私に任せていただきたいのです。」


「それは良いが、どうするつもりだ?」


「イオリ様、もし宜しければ私の執事になって頂けますか?」

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