三章:ララミレイユ・ブーケランド
三章01:任務、フレンドポイントの収集 Ⅰ
「う〜ん……」
翌朝、二日酔いとはまどろみから解放されたクロノは、頬に触れる柔らかな何かに目を細める。
「よく寝られたでござるか、マスター」
「ん……ノーフェイス……え、ノーフェイス???」
がばりと、事態を飲み込めずに起き上がるクロノ。悲しいことにアレイスターのアバターで寝落ちしたせいで、股間のほうも起き上がっている。
「ふふ……マスターがあまりに気持ちよさそうでござったから、つい」
「ま、まさか一晩中ずっと膝枕を……?」
申し訳ないやら恥ずかしいやらで赤面するクロノ。どうやらクロノは、たった今起きるまでずっと、ノーフェイスの膝枕で惰眠を貪っていたらしい。
「気にする事はないでござるよ……拙者の身体で気持ちよくなって頂けるのもまた、忍冥利に尽きるでござる」
「い、いやそうは言ってもノーフェイスは女の子だし……」
陽光に煌めく薄紫色のメカクレショートカット――の、隙間から漏れる潤んだ瞳。そして何よりも推しポイントは褐色肌。たいがいありがちなメインヒロインに惹かれないホシノ・クロノは、今に至ってこの属性が自身に対してのクリティカルである事を認めざるを得なかった。
「嬉しいでござるなあ。マスターは拙者を女の子として扱って下さるのでござるか?」
くすくすと笑うノーフェイスからの、幾重もの連撃を受け後退するクロノ。まずい……どうにかしなければと見やるのは時計。そして指す針はとっくに昼の十二時手前。これはいい逃げ文句を考えついたぞと、クロノはさも急いだふうに(事実急いではいるのだが)告げた。
「そ、それよりノーフェイス、急いでギルドに向かおう! このままだと昼休みになっちゃうかも」
「駄目でござるよマスター。ここからギルドまで、走ってももう間に合わないでござる。ゆっくりと栄養を摂って……昼休み明けに着くように参ればいいでござろう?」
やんわりと腕を捕まれ、ベッドに引き戻されるクロノ。ノーフェイスに兵糧丸だと黒い錠剤を口移しでねじ込まれ、あれこれってキスじゃないですかと思いつつも身体が言うことを聞かない。
「ノー……フェイス……んっ」
「ノゥ、で構わないでござるよ……マスター」
畜生……これヒロイン一人ルートなら完全にハッピーエンドなんだが、悲しいかなこれソシャゲなのよね……どうにかしてこの状況を打開しなければ……と足掻く(足掻ききれていない)クロノに、ついに外部から福音がもたらされる。
「おーい! いつまで寝てんだよクロノッ! ギルドしまっちまうぞー!」
ようこそ素っぴんララミレイユ。君のおかげでラッキースケベは邪魔されたけど、おかげで取り返しのつかない泥沼に落ちる事だけは避けられた。感謝カンゲキ雨嵐的なアレだ。
「はあっ??? クロノ……そんな……」
だが強力な援軍だった筈の彼女は、その場にへたり込むとあんぐりと口を開く。……くっ、そうか創作物のお約束なら、ヤンキーっ娘は以外に純情……してやられた……
「む、おはようでござる、ララミレイユ殿。ただいま拙者は、マスターに兵糧丸を口移ししていただけのこと。お気に召されるな」
「は!? だって勃ってんじゃん!! クロノっ! 見損なったマジでっ! 昨日はあたしのこと、あんなに優しく抱っこして励ましてくれたのに……!」
……いやそれもしてないけど。しかして疲労困憊。返す言葉もないところに、騒ぎを聞きつけたリーナクラフトも現れる。
「おっ、おおっ、どうしちゃったのかな皆して。あああーッ!!!! クロマニョンがイチャイチャしてる。ずっるーい。一人だけ抜け駆け的な? ボクも混ぜてよ的なーっ?」
ほっとしたというべきか否か、リーナクラフトだけはいつも通りのテンション。いや3Pって楽しいのかなアレ……クロノ的には、どっちの女の子にも気を遣わなきゃで面倒な感じしかしないのだけど……とまれ、これで騒動は集結し、一行は遅めの朝食を摂りながらギルドに向かう事になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます