第15話 宮殿内の晩餐会 3
「それと大事なことだが、人質としてある200名の労働者たちはどうしている?」
「はい、指示通り彼らはホテルウラノスで旅装を解いて各人一部屋をあてがっております。大阪では考えられなかったような生活をさせております」
「あの中には、確かミスター・ホンマを助けた7名の手練の者たちがいます。今回は労働者たちの動揺を沈めるために彼らの存在が非常に際立ちました」
「その者たちはホテル内でおとなしくしてるか?」
「はい今のところは200名のリーダー的な位置を占めており、おとなしくしております。ただ・・・」
「ただ、なんだ?」
「先程の秘書からの報告ではボスのミスター・ホンマから電話連絡がホテルにあったそうです。内容は暗号を使っていたのでさっぱりわからなかったそうです」
「そうか、まだミスターホンマは何か別の考えを持っているかもしれんな?」
「今のところそう思って準備をしておくのが良いかと思います」
「いずれにせよ時間が解決するな」
「はい、私もそのように思います」
「わかった後はよろしく頼む」
建築家が集まるテーブル席でいきなり
「おー!」と言う歓声が起こった。
相原が得意の手品を披露してる。
彼は自分の手の中にあったコインを握りしめ
「フッ」
と息を吹きかけるとテーブルを挟んだ正面にいたヒペリオンの建設大臣の胸ポケットからコインを一瞬にして取り出したからである。
それを見た取り巻きのセレブたちから一斉に拍手が起こる。
建設大臣も胸の中から出てきたコインを指でつまんで不思議そうに眺めている。
「いやー、相原さん。さすがですね!」
隣のテーブルから北川が来て相原を褒めた。
「いやーこんなものはなんでもないよ」
「どうやってコインをポケットに入れたのですか?」
「あー、さっき大臣と肩を組んでトイレに行った時にそっと胸ポケットに入れたんだよ」
「なるほど、そんな単純なネタで喜んでくれるなら安いもんですね」
「ホントにそうだなこの国の人間は純粋で助かるよ」
建設大臣とセレブたちはまだコインを見て盛り上がっている。
「おい、フェーペ。次は大蔵大臣を呼んでくれ」
「わかりました」
その指示でフェーペは先ほどまで日本の元大蔵官僚の谷のテーブルで談笑していた大蔵大臣を国王の元に連れてきた。
「大蔵大臣、彼らの予算の件で話をしたい」
「はいわかりました。一体どれぐらいの予算を用意したらよろしいのでしょうか?」
「そうだな1人ずつ日本円で月給1億円で予算を組んでくれ」
「月収1億ですか?」
「そうだ1人の年間収入が12億円だ。それと別に月1億円をホテル・ウラノスに住む200名の労働者に均等に分けて与えるように」
「わかりました。9人プラス一団体ですから年間予算120億円ですね」
「それを10年間与えるように」
「それを10年分と言う事は120億× 10 =1200億円ですね」
「そうだ、さらに10年間の研究開発費用に一兆円を当てるように」
「はい、我が国の経済状況から金額的には全く問題ありません。しかし大丈夫なんですか?こんな法外な高額な給与を彼らに与えて?」
「なに、モノは考えようだ、10年後には100兆円になる確実に当たる万馬券に投資したと思えばいい。安いものだ」
「はい、陛下がそこまでおっしゃるならわかりました」
「それともう一つ。秘書たち大事なことを伝えてくれ。『日本のエリートの優秀な精子によって優秀な子種を残すように』とな」
「わかりました」
「よろしい、下がってよし」
「はは!」
壇上から下がる大蔵大臣。
「いやー、いつもは三角公園でカップ酒を半分半分しつつ飲んでいる時間やのにな」森が相原のテーブルにやったきた。
パーティも終盤になり、テーブルの垣根を越えてエリートたちが赤ら顔で集まってきた。
「まるで夢のようですね」北川が
「ああ、これがリッチな旅行と思えればな」と前島
「若い連中はだいぶ超リッチな接待にほだされていますねえ」と谷
「これは、早急にわれわれの意志を確認する必要性があるなあ」桐生が言った
「今日のところは、みんなとりあえずヒペリオン国王に協力するふりをしておこう。まあ作戦はたててあるから後日説明する、しばらくはみんな従順な態度でいこう」と本間が言った。
「大石蔵之助ってわけか」相原がつぶやいた。
もう一度オーケストラによる国歌吹奏が演奏された。
セレブたちが立ち上がり、壇上のヤペトウス国王がゆっくりと降壇してパーティー会場から姿を消した。
「皆さん、今日はさぞかしお疲れになった事と思います、国王陛下も大変お喜びでしたので、お帰りになってどうぞごゆっくりなさって下さい。あす以降のスケジュールは各秘書に伝えてありますので彼女たちからお聞きください」
内務大臣フェーペがパーティーをしめくくった。
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