街角の魔法使いさん

水森錬

プロローグ

 ここはとある街。

 晴天輝くお昼どきと言った時間帯にとある建物から1人の女性が回転灯の付いている看板を持って出てきていた。

「ふぅ……案外仕込みって時間がかかるものね、初日ですし少し多めに作っちゃったのもあるけれど……その初日に開店時間を過ぎるのは我ながらどうなのかしらね。まぁ花輪すら出してない個人経営の喫茶店ならこれでもいい……のかしら」

「いや良くないですって丁奈てぃなさん」

「俺たち、ちゃんと給料出るか心配になってきましたよ……」

 丁奈と呼ばれた女性が看板を設置していると、建物の中から二十歳程度の男女が、シックな色調の、まだノリのついたシャツを気にしながら顔をだしている。

「心配しなくても大丈夫よ。そもそも喫茶店は私の道楽も含んでるものですからお賃金はちゃんと出ます。……それより卸たての制服はの着心地はいかがかしら?」

 看板の電源を入口横にあるコンセントに差しながら丁奈が2人に聞く。

「新品だからまだゴワゴワしてますけれど着心地は悪くないですよ」

「流石にカッターのノリはね。でも悪くないのなら、よかったわ」

「でも結構いい布じゃないですか、これ」

小虎ここちゃんは服飾系だったかしら、確かに長く使えるようにといいものを選ばせてもらったからね、気に入った?」

 小虎と呼ばれた長身の女の子は首を縦に振って。

「はいすごく!……でも服飾系というにはちょっとおこがましくなっちゃいますよ、あくまで自分の服を少し作ったりする程度ですから、趣味の範疇ですよ」

「小虎、まだ似合わない服作ってたのかよ」

「うるさい龍五郎たつごろう

「ふふ、やっぱり仲がいいわね。それじゃあ、開店するからそろそろ中に入りましょうか」

「「仲良くないです!」」

 上品に笑う丁奈の後ろで小虎と龍五郎の二人は、見事なまでに揃った反論をして、それも丁奈に笑われることとなった。

 こうして、喫茶イーリスはスタートしたのだった。

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