ー初ー


「クソガキはもう寝る時間じゃねえか?」


ダンプは小馬鹿にするように親指で集をつつくが、集は下を向いて


「お前BBQやったことねぇだろ。」


集は悟るように言い、その場から立ち上がる。今回は面倒そうではない。


「BBQって何だよ。」


「美味しいもん食わせてやるから黙って着いてこい。」


集は砕かれた扉の残骸を踏み、電気がついていないスーパーを目指す。ダンプも同じように残骸を踏んで集に着いて行く。薄暗い灯りもない道を歩くと小さな光が揺れながらこちらへ向かってきた。ダンプは警戒していたが集は全く警戒していなかった。それは懐中電灯の光であることを分かっているからだ。そしてガタガタと音を立てて近づいてくる。


「誰?」


それは女性の声。集はその声に聞き覚えがあった。


「叶…?」


光はさらに揺れながらこちらへやってくる。


「何だ知り合いか?」


ダンプは今まで警戒していた態度を変えていつも通り仁王立ちした。


「お前叶じゃん!良かった…俺以外に人間っているのな…」


集は歓喜のあまり半泣きになりながらその女の肩を両手で掴み、安堵する。

その女は滑らかで柔らかそうな黒髪で背の半ばまであるストレート、右手に懐中電灯、左手にキャリーケースで制服を着ていた。

彼女は叶(カナエ)。集の幼馴染みで成績優秀な女子高生である。

叶は倒れ混込むようにキャリーケース二手をついて膝を曲げて腰を落とした。


「もうなんで誰もいないのよ…電気はつかないし水は出なくなったし…」


ダンプの話を聞いた後なので彼女が無事で本当に良かった。


「あんたこれからどうするの?」


「俺は飯取りに行くだけだけど?お前こそどうするんだよ。」


「どうって…って、飯取りに行くってどういうこと!?まさか万引き!?」


「小銭くらい置いてるわアホ!…でもしゃーねぇだろ。誰も居ないんだし。」


「そ…そうよね…後で事情を説明すれば…ところでそっちの人は?」


叶は集より大柄な男を見て聞いた。


「俺っちギャンブルダンプって言うの。よろしくな。嬢ちゃん。」


そう言うと三人はまだ謎がありながらも共に行動することになった。

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