灰色にしたあなたは私を灰色にしたまま自分に白を上乗せしようとした

 私が灰色になった理由の一つ

 それはあなた

 元から私は灰色になっていたとも思う

 人のせいにして自分のことを棚に上げるのは好かない

 それでもあなたは私を灰色にしたと思う


 あの時私は怖かった

 私が何とはなしに口にした言葉があなたを傷つけていた

 それを知ったのはそのことを告白していた所があったから

 今までたまに訪れて見ていたあなたの場所にふと訪れて

 私はあなたが私のことを書いているのを知った


 あなたは私が見る可能性を知って書いていたのだろうか

 あなたは私に見て欲しくて書いていたのだろうか

 あなたは私以外の人にただ意見を求めて書いていたのだろうか

 あなたは私以外の人に慰めて欲しくて書いていたのだろうか

 あなたは誰かが私に攻撃するのを期待して書いていたのだろうか……


 正直な話、あの文面から第三者が私を特定出来たのかと言われると

 分からないという言うのが答えだ

 探偵とか推理が好きな人がその人に繋がる縁を辿っていけば分かるだろう


 私は今でも分からない

 辿れると言えば辿れるし

 すぐに誰かと分かることも無い


 ただ私は私に関わる周りの人に嫌な感情が広がるのが嫌だった

 私がそういうことをする人だと思われるのも嫌だった

 

 エゴだ


 ただのエゴだったと思う

 それも自分自身で認識できるくらいの黒いもの


 それでもわずかな可能性でもあるのは嫌だった

 私の大切な人

 私に優しい言葉をかけてくれた人

 その繋がりが目に見えてあるのがとても怖くなった


 だから消しました

 消せるものをどんどん消して

 なるべくわからないように

 黒に白を混ぜて一生懸命に灰色になるように

 何度も変わらない灰色を見ながら

 何度も白を足しました


 私生活でもうまく行かず、ネットの世界でもこんなでは私はもうどうしようもないだろう

 それでも優しい言葉をかけてくれる人はいて

 それを求めて私は縋ってしまう


 私は相談しました

 私にとって大切な人

 私に色をくれた人

 私の心を暖かくしてくれた人

 そして私でもなく、あなたに対しても、どちらかに偏った意見を出さない人

 冷静でいてくれる人


 私の心を暖かくしてくれた人から発せられる言葉は

 全て本当のことで

 でも少し本心ではないことも混ざっていると思っている

 どんなことも気にしないと言っていて 

 多分、それは全て本当では無くて

 気にしないようにしていたとして、気にならなかったとしても

 少しずつ毒は体にたまっている


 白に落とされた黒はどこまでも広がって薄まるけれど

 白くなることは無い

 灰色の私はそれを知っているから

 だからあなたからの言葉を伝えるのが怖かった

 私が灰色であることを悟られたくなかったから

 いえ、私が灰色であることは既に知られているけれど

 それを自分から口にするのが嫌なだけだったのかもしれない


 仮初の私を見せて

 仮初の器に盛られた

 灰色の果実をテーブルの上に乗せている

 

 見栄えだけを良くしようとして

 どれだけ取り繕ったとしてもそれは仮初の私

 どんな色も私の灰色は灰色に変えてしまう

 灰色の私は

 誰にも混ざれるけれど

 全てを灰色にしてしまうから


 私は自分が何色になりたかったかも忘れて

 灰色でいることを望み

 灰色でいることを嫌っている


 解決したように見えて

 私の心の灰色はより深くなりました

 何もしないままが良かったとは言わないけれど

 一度起きたことを私はただ引きずっていました


 恐らくは私のことを

 対して関わり合いの無い人と言われたことも気になっていましたし

 かと言ってそれ以上の感覚を共有したいとも思いませんでした


 距離を置こうと思いました

 

 それなのに

 あなたのことはたまに見ていました

 見るつもりは無かったのだけど

 つい見てしまいました


 愛情の裏返しは無関心だというけれど

 私はあなたに対しての関心を失っていなかった

 愛しているつもりは無いけれど

 気にしてしまっていた


 全てを忘れて

 私の記憶から消し去って

 何事も無かったかのようにしたかった


 あなたはあの日の告白を少ししたら消しました

 その後に綴られて告白文たち

 それは私に関するものでは無かったと思うけれど

 しばらくしたら消えていました


 いつしかあなたはその場所から立ち去っていて

 私が知ることの出来ない世界へと行っていました

 その方が良かったのでしょう

 私もすべて捨ててあなたが知ることの出来ない世界へと行った方が良かったのでしょうか


 あなたのことが頭に浮かんで

 忘れられないよりも

 全てを捨てて白になりたいと

 そう願っても良いのでしょうか

 

 私はもう忘れようと思っています

 今度こそ忘れようと


 灰色を白で塗りつぶして

 私の中には何も残らないように


 でも

 私は怖い

 忘れてしまうのが怖い


 あなたを傷つけていたように

 また同じことを繰り返すことを

 

 私はどうして傷つけてしまったのか

 それすらも忘れていくでしょう

 こういうことがあったと

 覚えていたくてもきっと忘れてしまう


 灰色が白くなる方法

 私は何も覚えられなくなって

 私はどんどん忘れていっている

 私は覚えていられない


 いつかあなたの名前も思い出せない

 そんな日が来て

 その時、私は二本足で立っていられるのでしょうか


 どうしようもない灰色が

 白くなるために

 どうしようもない灰色が

 白から逃れられない


 落ちた黒が全て失われていく

 黒は私そのもので

 白も私そのもので


 灰色が今の私自身

 灰色の私は灰色の私を忘れない

 灰色の私は灰色の私を忘れられない


 いつか白に戻っても

 またすぐに灰色になるでしょう

 前見た灰色と同じ

 薄汚れた灰色に彩られて

 私は灰色の世界に再びいるでしょう

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