第5話 歪まないために……









「ここどこぉ?」


 めがさめたらしらないところでしゅた。

 

 おかあさんは?


 おきあがってん~ってからだをのばしましゅ。


「んんん~~~っ」


 そして、ちゅくえのうえに、なにかいっぱいえほんとはこがありましゅ。


 ぼくはちかずいてかくにんちまちた。




「?!?!」


 ぐはっ……


 あらすじを言う前に、言っておくッ!

 おれは今、黒歴史ってやつをほんのちょっぴりだが体験した……


 い、いや……体験したというよりは全く理解を超えていたのだが……


 あ…ありのまま昨晩起こったことを話すぜ!


「おれは、魔法で自分の家を作ったと思ったら、

 俺の二次嫁衣装エログッズを着た女神の写真が残っていた」


 な…何を言っているのか分からねーと思うが、俺も何をされたのか分からなかった……


 頭がどうにかなりそうだった……


 美少女だとか、コスプレだとかそんなチャチな感想じゃあ、断じてねぇ……

 

 もっと恐ろしいものおかん力の片鱗を味わったぜ…



 









 お、恐ろしい威力だった……気絶して、幼児退行するほどまでにダメージを受けたのに、その幼児退行を強制的に治すほどの威力を未だに保持しているとは……


「つか、何でお前がコスプレしてるんだよ!!」


 似合ってるよ?

 美少女だもん、現実離れした美少女だもん!

 空色の奇麗な長い髪に、日本人好みな可愛らしい顔、スレンダーでも女の子らしい丸みを帯びた体……

 女性が苦手な俺でも美少女と思うもん!

 でも何で俺の秘蔵アイテムを着る必要があった?!


 狭い部屋の中でいろいろ工夫して考えて隠していたのに、何で全て見つけられんの?!

 処女のくせにそのおかん力は何?!

 俺のこと全部理解わかってんの??!!


 そんで何で着るの?!


 さらに言うなら『どうしてもという場合 』って何?!

 俺にどうしろって言うの?!


 



 そして、写真は残っているが、二次嫁衣装は、俺の服と共に消えていた……


 衣装が残っていたら、せめてもの仕返しに香りを嗅ごうと思っていたのに……


 ダメだ……心が荒んでやがる……



 



 俺はシャワーを浴びて、朝食を摂って、やむお得ず秘蔵のTシャツを着る。


 ちなみにこの拠点は窓はあるけども、開くことは出来なかった。

 どうやら、このアパートの一室が拠点魔法の効果範囲であり、決して日本の俺の部屋ではないみたいだ。


「はぁ、いってきます」


 秘蔵Tシャツにジーパン、革ジャンを着て、誰に言うでもなく出かけることを言葉に出し、ドアを開けて外に出た。







「ほいほいチャーハン?」


「歪みねぇな!!」


 お出かけ一歩目で、ファイヤーゴブリンとの貞操を掛けたファイトが幕を開けた。











「Oh……Thank you sir……」


「ぜぇ……ぜぇ……勝った……」


 今日も何とか貞操を守ることが出来た。


 朝一で世紀末ファッションのガチムチゴブリンはきついぜ……







 そして、俺は北を目指して歩き続け……ない!


 今日は玄関に置いてあった折りたたみ自転車を持ってきている。


 それで森の中の安定したところを進むぜ!!











……………



『右前方1km先にラリアットエイプが居ます』


 この世界に来てから既に2か月。


 索敵や鑑定代わりになる、意外に有能な世界おんな?のテノンだった。

 しかし、たった2か月では、18億年かけて培ったコミュ障を直すには至らず、まだまだ距離間ガン無視のマシンガントークは健在である。


 つまりプラマイ・マイナスだ!!

 便利さを考慮してもマイナスだ!!


 因みにラリアットエイプとは、やたらと腕の発達したテナガザルである。



「強くなりたい」


 そして、ずっと付きまとわれているこのファイヤーゴブリン・カズヤも一緒である。

 なんかもう色々とメチャクチャである。


 今日も俺達は、素手での実践訓練に励む……







『ここから先が、魔境と呼ばれる地域です』


 テノンが言う。


 魔王グラトルは、このファースと呼ばれる大陸全体を支配しているが、根城としているのは、大陸をほぼ半分に割るファース山脈だ。


 中央にあるマッターホルンのような山を中心に、約500kmを魔境。

 500~2000kmを奈落樹海、2000~3000kmを外界と呼ぶらしい。


 その範囲は、この大陸のおよそ6割強を占めており、残った3割ほどの土地にいくつかの人類の国が存在するようだ。


 そして、人口と可住地域の関係で、少しの天候で飢饉が発生しやすい。


 そこで、可住地域を確保するために、魔王グラトルを討つという決定が下されたようだ。

 食糧問題は、この大陸の最重要課題の一つであり、国家連合軍として、魔王打倒の大義の元に、精鋭たちが集結することになる。



「……ごくっ」


 この魔境に生息する魔物は、平均戦闘力78000……単純な戦闘力では、人類最強でさえこの数値には届いていない。


 因みに奈落樹海は平均50000、俺が最初に降り立った下界は、平均3000らしい。


 あと一月で戦争が始まる……


 一応俺の戦闘力も、150000→168000まで上がっている。


 特に、昼間はテノンのマシンガントークと、夜はアルテのおかん力によって、俺の精神は鍛えられた。


 そろそろ精神的苦痛耐性とか取得してもおかしくないと思う……きっと精神力というパラメーターがあったら、18000くらい上がってるね。


 そこから推察するに、この戦闘力というモノは、あくまで総合の数値だ。


 例えば、戦闘力が同じ10000の魔術師と戦士が居たとする。


 魔術師は、戦士と同じ体力を持つか?

 答えは否である。


 ならば戦士は魔術師と同じ魔力を持つか?

 これもまた否である。


 つまり、戦闘力はあくまで目安で、戦い方によっては倍の戦闘力を持つ者にも勝てる可能性は十分すぎるほどあるのだ。




 ならば何故そのような表記なのか?


 それは別世界シリアス×コミカル設定レベルやステータスを入れたのを、作者が後悔しているからである。


 と、そんな感じの夢を見た気がしないでもない……






「それじゃあ行こうか」


 俺達(カズヤ含む)は、魔境に足を踏み入れた。




――――――――――――――――――――――――――

おかん力

 家事や、家族に対する能力値であり、戦闘力で劣る女性が、家族を牛耳っているのはこの数値が高いからである。


 能力的には、家事などのサポート系能力。

 家族に対する異様な直観力・先読み力・理解力が上昇するなどである。


 アルテのおかん力は267000……


 平均的な女性のおかん力は180000と言うことを考えれば、かなり高い数値だと言うことが分かるだろう。


 実際、ほぼ初対面の男性である主人公・渉の数々の隠蔽を見破り、全てを白日の下に晒して気絶させるという離れ業を見せた。

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