詩情

詩情なんかない

私はただ身体のまわりの日々を拾い集めてくっつけて

言葉の連なりを作っているだけ


たとえばこうだ


布団の中に滑り込んだ音を立てないように

天井を這うランプのケーブルに手を伸ばす

僕の手はシザーハンズ ケーブル断線 弁償義務あり

カーテンのかかっていないカーテンレールつまんで弾くビー玉みたいに

安物のハンガー針金ですらない安いハンガーにしかなれない

僕は憐憫の情を抱いてハンガーを切った 長い棒三本になるように

ハンガーはハンガーでなくなり それは解き放たれたのか殺されたのかわからないが

小さなゴミ箱に突っ込めば明日にはゴミ処理場に着くだろう


こういう具合に

僕の中に詩情はない

あるのは僕の外にだけ

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