第12話 反復するトートロジー

一緒に居るときに楽しくないのは・・・・・・楽しいことじゃないよね。


あ、笑ったな。僕が言ったみたいに、反復して繰り返すのをトートロジー、つまり同義語反復と呼んで称えるのだけど、これを「間違った」使用方法であるところの誤用と定義して定めることは果たして可能か?


意外と、思ったよりも簡単ではないし、難しいでしょ。


駄洒落に聞こえてきたって?


そう、いま僕らがやっているように言葉遊びの諧謔かいぎゃくとして使うことも可能なわけだ。


有名どころで言えば、「いにしえの、昔の武士の侍が、馬から落ちて落馬して」ってやつだね。単純でシンプルなくすぐりというだけではなくて、繰り返すことによって語意を強調してアピールする効果もある。


その通り。「やっぱり誰々は誰々だね」みたいな漫画なんかでよく見られてお馴染みの台詞もトートロジーだ。意味はないけど、なんとなく前後の文脈から意味が発生する。


ああ、無意味な言葉の羅列が説得力を持つ例として「プレゼント、気に入ってくれるかな?」に対して「気に入れば気に入ってくれるよ」って答えるのなんかが見本だね。


うん、「好きだから好き」もそう。本来意味がないものが意味を持つ。これって興味深くて面白くない?


む、確かに。「やるときはやる」みたいな同語反復ならともかく、「力はパワー」みたいな同義語反復や「滑稽で面白い」みたいな類語反復だと言葉の意味を限定する効果もあるね。


じゃ、こんなのはどう?「もしオセローが愛妻家であり、かつ、オセローが妻を殺害したのなら、妻を殺害した愛妻家が存在する」。なんとなく煙に巻かれちゃう?すごいこと言ってるっぽい?これも反復の力だね。扇動に使えるよ。


えぇ、物騒すぎる?別に僕オリジナルの発想じゃないってば。ふふふ、今度トートロジーについての論文を刷ってきてあげるよ。楽しみに期待してて。

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