第5話 祖母とテディベア

久しぶりねぇ。えぇ、私はこの通り、楽しくやってるわ。


姉さま、やっぱりお着物よく似合うわねぇ。


え?ちがう?・・・・・・そう、だったわねぇ。

あらいやだわ、まだお茶も頼んでいなかったわね。いまお願いしましょうね。


あのね、姉さま。私この間テディベアを頂いたのよ。ほら、これ。


可愛いでしょう?英吉利いぎりす土産ですって。バッキンガムの衛兵さんなのね、でもお洋服もお帽子もお靴も、全部はずせるのよ。だから今度お洋服だのお着物だの縫ってあげるの、私。


ね、素敵な考えでしょう。・・・・・・あぁ、お茶が来たわ。さ、召し上がって。


お着物を縫うの、姉さまが一等お上手なんですから手伝って下さらなくちゃいやよ。


うふふ、楽しみだわ。一式全部作ってあげましょうね。衛兵さんだから男の子ね。羽織、袴、着流し、浴衣、ちいちゃい根付けだの煙草入れだのも面白そうね。女の子だったら姉さまのお着物のきれを頂いてお揃いで作るのも良かったのだけど。帯留めは飾りボタンでもいいわね。姉さまのつけてらっしゃるような細工物は難しいでしょうけど。


えぇ、ずいぶん細かい造りだわ。素敵ね。動き出しそうだこと。蟹といえば、伊豆の別荘ではずいぶんお転婆したわね!覚えてらっしゃる?


まぁ、忘れん坊な姉さまね。こっそり蟹を別荘に連れて帰ったのが夜のうちにお玄関まで逃げてしまって、翌朝びっくり仰天なすった母さまにそれはそれは叱られましたのに。父さまは大きな声で笑ってらした!楽しかったわね!


あら、もうこんな時間?お夕飯ですって。


もうお帰りになるの?また近いうち、きっといらしてね。

きっとよ。お待ちしてるわ。

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