第5話 迷子でも捨てられた子でもありません

 俺は今、近くの街へ助けてくれた二人と一緒に向かっていた。

 この二人には、ケモミミがあった!

 ラーグさんって言う人は、紺の髪で何となく犬っぽい耳。大きい感じがする。もう一人は、アベラさんと言う人で、茶色い髪。この人の耳は猫っぽい。

 で、俺にもあった! 見たわけじゃなく、触ったらケモミミだった!

 あ~早く、自分の姿を見てみたい!


 「疲れてないか?」


 ラーグさんに聞かれ俺は頷く。あんなに走った後なのに一切疲れはない。


 遠くに明かりが見える。あれが、フフ街か。

 それから一時間、歩いたら着いた。


 「おぉ。二人共お疲れ。おや、子供?」


 門番が二人に声をかけた。彼らもケモミミだ!


 「迷子かもしれない。届けがあったという話は聞いてないか?」


 「いや聞いてないな」


 「そうか。ありがとう」


 ラーグさんが聞くも、ないと返事が返って来た。あったとしても俺じゃないけどね。

 二人が向かったのは、ハンターの館という所だ。

 あれ? 冒険者とかじゃないの? それとも寄り道?


 「お嬢、戻ったぜ」


 「あら、お帰り。見回りご苦労様。おやその子は?」


 「迷子かもしれない。ミャル、ここに座って待ってな」


 ラーグさんに言われて頷いて大人しく椅子に座った。

 お嬢にもケモミミがある。茜色の髪と同じく赤っぽい耳。この世界では普通なのかもしれない。


 三人は、小声で話す。でも俺の耳は、その会話を拾えた。


 「もしかしたら捨て子かもしれない。名前以外覚えてないと言っているが、嘘だろう」


 アベラさんがそう言った。バレていた……。でも、親と聞かれても答えようがない。


 「10歳ぐらいかしらね。魔力があれば、アルケミターになれるけど」


 「お金がないと無理だろう」


 お嬢がアルケミターと言っていたけど何だろう?


 「取りあえず、魔力鑑定しましょう」


 「そうだな」


 ラーグさんが頷く。


 「さあミャルくん。この丸い水晶を触って。大丈夫怖くないから」


 これで魔力を鑑定するのか? ちらっとラーグさんを見ると頷くので、お嬢が持って来た水晶の上に手を乗せた。少しだけ青くなった。


 「魔力はあるけど、アルケミターになれるほどではないわね」


 「ねえ、アルケミターって何?」


 「魔力を使って色んな物を作る人たちの事よ。錬金術師ともいうわ」


 錬金術師! でもそれって、俺じゃなれないって事?

 マーガラス様、俺は錬金術できなさそうですよ!


 「親がもしかしたら戻って来るかもしれないから役所に届けるか?」


 「そうね。お願いしようかしら?」


 いや、来ないんだけど!

 俺は、ブンブンと首を横に振りお嬢にしがみついた。

 異世界転生の定番は冒険者になる事だ! 何とかここにいて冒険者にならないと!


 「懐かれたなお嬢」


 「うーん。でもね……困ったわね」


 困らせてごめんなさい。


 「俺、冒険者になる!」


 「「冒険者!?」」


 俺が呟くと、皆は驚いた。それも不思議そうに……。なんでだ!

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