25冊目☆☆☆ ロレイン・ヒース著「悪魔公爵と鳥かごの乙女」

勝手にレーティング:これはR18かな


「公爵とリトルローズ」「氷の紳士に拾われた家政婦」に続く「セント・ジェームズのスキャンダラスな紳士たち」シリーズ3作目です。

 少年時代に目にしたある出来事をきっかけに斜に構えて世間を見ながら放蕩生活を送るアヴェンデールが女詐欺師ローズと出会い、ひとときの情事のために駆け引きをはじめます。序盤はそんな感じで、ある意味退屈でもあるのですが、中盤以降、ローズが詐欺を働いていた理由が明かされてからは、涙なしには読み進められませんでした。家族愛、友情、男女の間に芽生える真実の愛。様々な愛のかたちに胸を打たれる作品でした。


以下、ネタバレありの感想です。



 中盤に差し掛かった頃、ある出来事が起こります。ついに身体が結ばれたふたりが蜜月を過ごす中で、アヴェンデールがちょっとした出来心で約束を破ったことから、ローズが詐欺を働いていた理由が判明します。

 小説だからこそですが、このシーンに至るまで、ローズの友人男性のひとりが「棒のよう」だの「アヴェンデールより背が高い」だの、別の友人男性が「小柄」だの、その妻が「椅子に乗ってローズの世話をする」だの、さりげなく書かれてはいるのですが、それが重要な布石であるとは思わず、詳細に想像を膨らませたりはせずに読み進めていました。けれど、この出来事で全てが明らかにされます。

 彼らは皆、言葉を選ばずに書くなら「奇形」でした。大男、小人の夫婦、そして、ローズの弟は原因不明の病気で全身が歪んだ見るもおぞましい姿をしていました。ローズが詐欺を働いていたのは、見世物小屋から逃げ出してきた仲間である彼らの面倒をひとりでみるため、病気の弟ハリーを養うためだったのです。

 ここから先は、それまでの話と一変して、涙なしには読み進められない、様々な愛を描いた感動の物語になっていました。世間からは好奇の目でしか見られない、けれども心優しく賢明なハリーが、アヴェンデールとローズに関わることで、ふたりは今まで知らなかったお互いの本当の姿を知っていきます。エピローグはアヴェンデールの日記で締められますが、本当に感動しました。

 前作が萌えの詰まったロマンス小説なら、今作は感動のロマンス小説といったところでしょうか。文句なしに☆☆☆で、紙の本も買って手元に残しておきたい、そんな作品でした。

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