8冊目☆☆☆ ジャクリーン・ネイヴィン著「ささやかな背徳」

 勝手にレーティング:R18


 余命一年を宣告された社交界で悪名高い伯爵が死ぬ前に後継を望み、本屋で働いていた貧しい女性が結核の弟の医療費を稼ぐために契約結婚をするお話。

 控えめに言って最高でした。なんて書くとふざけてるみたいでアレですが、本当に素敵なお話でした。以下ネタバレを含みます。

 ヒーローは自分の後継となる子供を得るために、ヒロインは弟を助けるお金のために、愛のない契約結婚をします。

 ふたりは徐々に惹かれ合いますが、ヒーローに残された時間がわずかであることで、契約直後からの何気ないふたりの生活がとてもあたたかく切なく描かれているように感じました。自分で手入れをしたお気に入りの庭を案内しながら「春には満開の花が咲く」と語る伯爵の言葉に、彼はその頃には生きていないのかもしれない、とヒロインが胸を痛めるシーンは、その情景が目に浮かぶようで読んでるこちらも胸が締め付けられました。さらっと描かれているだけなのに泣いてしまうくらいに。

 ヒロインはヒーローを愛するようになりますが、弟のために大金が必要になり、贈り物として受け取ったヒーローの母親の形見を売ってしまいます。それでも足りなくて盗みまで犯してしまいます。そして一番幸せな時期にその秘密がバレてしまいます。すれ違いものでは、ここで双方とも大切なことを伝えずに拗れて拗れておかしなことになるパターンが多いのですが、このヒロインは正直に全てを告白します。ヒーローもすぐに後先考えない行動に出るのではなく、距離を置いて考えます。そういったふたりの行動から本当に相手のことを大切に想っているのだと感じられて、とても感心させられました。

 ヒーローとヒロイン、それぞれが抱えるトラウマや事情も納得のいくもので、ラスト付近の思いやりの溢れるヒーローの行動にはほっとさせられました。

 是非、ふたりの物語の最後を見届けていただきたい、☆3つでは足りない、おススメの作品です!

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