歳の差6歳にしてだから?

 秋も過ぎ年末へと向かっている。

 もうそろそろいい加減、わたしも進退を決する時だ。

 決断するための要素としていくつかあるわけだけど。


 ①祖母の在宅介護プラン

 ②WEB投稿小説コンテストの結果

 ③東京の志望校の文芸に関するAO入試

 ④大阪の芸術大学のピアノ推薦入試

 ⑤大阪の○○大学の模試合格率

 ⑥京都の△△大学の模試合格率

 ⑦祖母・母親・恵当けいと・わたしの共同生活の今後

 ⑧恵当とわたしの、恋の進展


 ・・・順に解説しようか。


 ①祖母は病院でリハビリをしながら、年末の退院に向けて頑張っている。マンション内の簡易なリフォーム(手すり等を据え付けるのではなく、着脱可能なレンタル品で賄う方法)がほぼ終わりそうだ。


 ②わたしと恵当の『同棲エピソード』が凄まじい破壊力を持ってプロモーションとなり、PV・評価とも急上昇。一桁となっていた週間ランキングがとうとう5位以内に常駐となった。


 ③わたしは実はもうAO入試の願書を出した。WEBサイトの許可ももらった上でコンテスト用に投稿している小説の途中までの原稿を添付して。

 書類選考は既に通り、二次面接がクリスマスの二週間前だ。


 ④どうやらさきさんが学生ながら音楽学科内で絶大な影響力を持っているらしく、わたしの演奏の音源を教授に持参して、「この子、欲しいんですけど」と一言言っただけで二次面接の招集通知が来た。二次面接はやっぱりクリスマスの少し前だ。


 ⑤模試では一定して合格率90%を超えている。うーん。どうしてだろう。


 ⑥こちらはほぼ毎回80%を超えてる。本当にどうしてなんだろう。


 ⑦祖母がマンションに戻ってくるタイミングが一旦は区切りになるんだろうと思うけど、わたしよりも母親の方が完全に恵当依存症になってしまっている。「このままウチの子にならない?」などと惠当に半ば本気で言っている。ただ、「お婿さんに来ない?」といい出さないだけまだ理性を保っているのだろう。


 ⑧これは・・・実は、報告事項がある。


「彼氏さんと彼女さんですか?」


 放課後図書館の帰り道に街頭で呼び止められてインタビューを受けた。

 テレビの『あぶねい奴ら』っていう深夜番組だ。学校に許可をもらわずに顔を晒されるのもどうかと思ったので断ると、


「そんなこと言わずに〜」


 と懇願してきた。


 なんのコメントを求められたかというと、


「お2人の間柄は今、どこまで?」


 素人相手にかなりきわどい企画を行っていることで有名な深夜番組だ。

 わたしも観たことがあって、面白さだけで言えば面白いのだけど、実際に自分が遭遇すると困惑しか湧いてこない。

 恵当とわたしは顔を見合わせ、2人して声を揃えた。


「なんにもありません」


 大体わたしたちを見た普通の反応は、


「ご姉弟ですか?」


 だろう。

 それをいきなり彼氏・彼女という前提で訊いてくるのだからこういう展開しか望んでいなかったはずだ。


『著しく年下の男子への嗜好を持つ女子高生。2人の仲はなんと×××まで進んでいた!』


 とか。


「なんにもありません」


 もう一度繰り返した。

 突然不機嫌になる番組スタッフ。


「ええー? そんなことないでしょ? ここからは僕の好奇心。あとでカットしとくから本当の事、教えてよー」

「なにもないんです」

「・・・じゃあ、プラトニックなんだね?」

「いえ。プラトニックとか不純とかそういう括りじゃないんです。本当になにもないんです」

「でも、彼氏・彼女だと?」

「それは間違いありません」

「じゃ、じゃあ、バレたらまずいでしょ?」

「なぜ?」

「だって、高校生と中学生が・・・なんてさ!」


 なんだろうか。

 どうしてもいやらしい背徳の展開にしないと気が済まないんだろうな。


 わたしがめんどくさく感じだした時、恵当がスタッフに言った。


「別に、普通ですよね。だって、僕が20歳の時、彼女は26歳ですけど。何かヘンですか?」

「いや・・・まあ、別に」

「じゃあ、おかしな言い回ししないでください」


 後からこのロケの放送回だろうと思われる番組の放送を見たけれども、わたしたちの映像は全くなかった。

 それよりも、そうだな、って恵当の言葉にニヤニヤしまくっている自分に気づいた。


「恵当」

「な、なに?」

「たった6歳、だよね?」

「うん・・・多分僕の方が先に死んじゃうし」

「いや、それは分かんないよ」

「嶺紗。そんな寂しいこと言わないでよ」


 なんだろう、嬉しい。


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