第29話 人狼と最終決戦

* 六日目


「人狼が誰かわかった」

朝。を、少し過ぎたころ。京也がすっからかんの食堂で言い放った。

かつては十人いた食堂も、次々に人を減らし、ついには九城、南雲、葉山、京也の四人だけにした。

窓から光が射し、室内は明るい影を作っている。

「そこで、今日処刑する人間は――」

「ちょっと待てよ」

 南雲が京也の言葉を遮る。

「人狼が分かったならそいつが誰なのかっ先に言えよ」

「九城だ」


京也の少し後ろにいた九城の腹からは腕が生えていた。訂正、腕が突き出ていた。

「――……!」

その腕は毛深く、鋭い爪が生えており、人間の腕を匂わせない、大きな人狼の腕だった。

九城の踵は浮いており、太ももからつま先へと血が垂れている。血を噴き出した口元は赤く、元の小綺麗な顔を汚している。

 腕が引き抜かれた後の腹の穴は、一夜目に人狼によって殺された七ノ瀬の腹の穴と同じようだった。

 九城はぺたりとその場に座り込む。倒れる。

 南雲の視線が九城の上を捉えると、片腕が、真っ赤に、異様な形に変化させた、葉山の姿があった。口元は歪んでいる。

「昼間の行動、処刑の時間が終わった」

 京也の形が変わっていく。

 京也の形はボコボコと変わっていき、

「次は、夜の行動だ」

 あっという間に人狼の姿に変わった。声がいつもよりも低く、聞き取りずらい。

「今夜処刑するのは、南雲、お前だ」

 二メートルはあるだろう人狼二人に囲まれた南雲は、瞼をそっと閉じた。

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