第27話 傍観と役職

 床は赤く湖を作り、頭の無い人間が泳いでいる。

 上半身を赤く濡らした京也は、赤く目を光らせ、葉山を睨んだ。

「一日に処刑していい人間の数は一人までです」

 いつの間にいたのか、南雲の背後には執事が立っていた。

「では、各自、部屋へお戻りください。昼食の準備を致します」

「葉山、後で話がある。ベランダに来い」

京也はゆらゆらと食堂を後にした。


葉山が九城の元へ駆け寄る。九城の首にははっきりと手の跡が残っていた。

「私の部屋で手当てするわ、大丈夫? 立てる?」

 葉山が九城の歩行を補助して部屋へ戻る。

 残された南雲は、横たわる首なしを見下した。


 *


 部屋に戻った南雲は携帯を取り出し、十二時に目覚ましをセットした。

 ベッドに横になり、目を閉じる。

 この後は、誰が死ぬのか、想像していた。


 九城の首には包帯が巻かれていた。

「葉山さん大丈夫ですか?」

「あなたはまず自分の心配をしなさいよ」

「でも――」

「別に殴られていないから大丈夫よ」

「そうじゃなくて、役職のことです。自分の役職言ってしまってよかったんですか?」

「あぁ……そこまで頭が回らなかったのよ」

「それじゃあ――」

「多分今夜にでも殺されるわね、でも人狼の目星は付いてるわ。よし、これで大丈夫そうね」

 葉山は九城の首から手を離して、立ち上がる。ベッドに座ったままの九城は、葉山を見上げるが、葉山の表情はわからない。

「人狼は南雲君よ、私が今夜死んだら、私の代わりに彼を殺してね」

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