第25話 首吊りと自殺

 京也の叫び声が食堂まで響くと、葉山と南雲は目を合わせ、食堂を飛び出した。

 

 内開きの扉からは、京也の叫び声が漏れていた。

 扉の正面に立つと、西川が床に横たわり、京也が西川の肩をゆすっていた。

 半開きの扉が影になり西川の顔は見えない。

 ゆっくりと中へ入ろうとすると、

「近づくな!」と、五十嵐に睨まれた。

 シーツが引き裂かれ床に散らばっていたこと以外、中の様子はあまりわからない。

南雲は恐る恐る扉の隙間から様子を窺う。

中はテーブルがずらされ、もともとテーブルがあったところに西川が横たわっていた。顔はグチャグチャに濡れ、瞳は焦点を合わせていなかった。そして首には青黒いアザが巻かれていた。

「首吊りね」

すぐ横から葉山が囁いた。

南雲は驚いて身を縮める。

 葉山は頭を押さえていた。

「首吊りって、ドアノブの高さでもできるのよ」

 葉山が指した先にはシーツがちらりと見えた。高さは通路側のドアノブと同じ高さ。部屋側のドアノブにかけられているのだろう。

「いったん、食堂に戻りましょう」

 二人は京也の叫び声に背を向けた。

 

 南雲は食堂へ向かう途中、葉山から話を聞いた。

 ドアノブの高さなら、足を伸ばせば尻は地面に着かないこと。

 首の動脈を圧迫したら数秒で気絶すること。

 その二つだけで、今回のことが起こせてしまうこと。

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