第4話 捜索と圧力

 スマホは、ベッドの下にも間にも落ちていなかった。エントランスに着いてからの喪失感は、いつも肌身離さず持っているスマートフォンがポケットに無かったことが原因だった。

 一樹は京也に、部屋に忘れ物をしたと告げ、一人、部屋に戻りスマートフォンを探している。

 記憶を辿る。学校から帰り、家に着くと激しい睡魔に見舞われ、部屋まではたどり着くことはできたが、制服のままベッドに倒れ眠った。その間、スマホは一度も触っていない。下校する時にポケットに入れたが、そのポケットの中にはハンカチーフぐらいしかなく、眠っていた間に落としたという可能性も考えたが、この部屋のどこにもなかった。


 諦めてみんなの元へ帰ろうとすると、扉からノックする音が聞こえた。のぞき穴から確認すると、エントランスに現れた執事だった。扉を開けずに返事をする。

「皆様がお待ちになっています。お急ぎください」

「今戻ります」

 一息置いてから扉を開ける。目の前には骨と皮しかないような老体が立っていた。

「どうかなさったのですか」

 老体が顔色一つ変ええずに聞く。

「僕のスマホが無いんです」

ひねり出した言葉に、執事の口元が不適に歪んだ。

「それなら、皆さんの通信機器はこちらで預からせていただきました故、誰として通信機器をお持ちになっておりません」

「え?」

「ですので早く食堂に集まってください」

「ちょっと待って。ちゃんと説明してよ」

「食堂で話を聞けばわかることです。今は早く食堂に集合してください」

「でも」

「集合してください」

 その言葉には、有無を言わせないほどの重さがあった。

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