第2話 目覚めと再会

一日目


 意識が戻り、頭上のスマートフォンを探る。数回空を掴む。いつも枕元に置いているのだが、そこにそれは無かった。

 意識が鮮明になり目に飛び込んできたものは、どこか見覚えのある天井だった。

 焦がした茶色を基調とした木製の部屋。ハイライトの小さなシャンデリア。部屋の隅にひは机があり、その対角にベッドがある。床には赤い絨毯と小さな卓。

 そのすべてが正しく綺麗だった。


 部屋を出ると左右へ少し長く伸びた廊下に出た。扉の横には赤い花の入った白い花瓶。それとは反対に進むとエントランスへ通じる階段。

 天井の高さと手すりの存在から、ここは二階だということがわかる。

 他にも部屋があったが、どれも扉が開いていた。

 手すりの下を覗き込むと、階段の下に複数の男女がいた。その中の一人が手招きをする。

 ゆっくりと階段へ向かう。少しの戸惑いも薄れ、角を曲がると、大きな振り子時計があった。その針は六時の方向を指していた。

 窓からは夕日が差し込んでいる。 

 階段の下の人たちには見覚えがある人とない人がいた。平均年齢は一樹と同じかその前後。服装は全員、同じ学校指定の制服。その中に五十嵐京也はいた。手すりの下で一樹を手招きした人は、昨日も一緒に帰宅した、あの京也だった。

 階段を降り、一樹の元へ行く。

 京也はうっすらと笑みを浮かべていた。

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