K先生と点滴の因縁



 なんだよ、なにか用かよ、と思って起き上がると、K先生は「麻酔用の点滴針入れるね」と言う。

 は? 聞いてねぇし。点滴ってなにさ?


「あ、聞いてなかった? でも入れるね~」

 相も変わらず話し方が軽い。

 てゆーか、あんたが入れるのかよ。マジかよ。

「どっちの腕がいい?」

 左……あ、でも左は血管見当たらないってよく言われる。

「ん? 大丈夫大丈夫。あるよ、ほら」

 自信たっぷりのK先生。マジかよ。


 注射嫌い。注射嫌い。だから採血も嫌い。点滴なんか三十年生きてきてやったこともない。でもきっと嫌い。

 そんなことを考えて気分が沈んでいるところに、K先生のひと言。


「あ、やべ。失敗した」


 オイイイイィィィイッ!!(怒)


 付き添ってる看護師さんが針棄て容器をさっと差し出し、アルコール綿もさっと差し出して傷口を押さえる。

 新しく刺す場所を探しながら「気分はどう?」とか軽く訊いてくるから、最悪だ、失敗されて最悪だ、注射は嫌いだ、痛いのもう嫌だ、最悪だ、とブツクサ文句を言ってやる。笑って受け流すK先生。

 てゆーか、失敗されたとこマジで痛いんですけど。大丈夫なの?

「麻酔用の針はちょっと太いからね」とか笑顔で言ってるけど、本当にそれだけ?


 もうそっちの看護師さんがやってよー!と気分最悪で思っていると、今度はちゃんと入ったらしい。ドヤ顔のK先生。はあ、どうも。

 手早く針が固定され、器具のついた管が装着され、それを収納する為にネットをかけられる。

「明日は朝から点滴だからねぇ」と言い置いて立ち去るK先生。マジかよ。

 そして私は、重大なことに気づいた。


 肘の内側に針刺してんじゃねぇよ、バカチンがー!

 腕曲げらんないじゃないかああああ!!

(その後、体調を尋ねてくる看護師さん全員に、失敗されたとこが痛い・腕が曲がらなくて痛いと訴えまくる。これ誰がやったのって呆れられてたからなザマーミロ!)



 もうやだ。本当に勘弁して欲しい。

 腕痛いからご飯食べるのも億劫。曲げらんないからお茶碗も持ちにくい。

 夜の九時以降絶食指示が出てて(翌日は丸一日絶食)お腹減るだろうからコンビニ行って食い溜めしときたいのに、腕が痛いから出かけるのも面倒だ。寝てしまおう。


 そう思って横になろうとしたら、なんか気配が……


「開けてもいーい?」


 お、お嬢ぉぉぉぉぉぉー!?


 ママが帰って暇になったようだ。

 それから消灯時間までの二時間、お嬢は居座ってお喋りしていましたとさ。


 私、子供大嫌いなんだけどなぁ……(げんなり)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る