満員電車は扁桃体を失う

ガタンゴトン


女子高生が背後に立っている

懐かしい私立の制服

きれいなローファー


ガタンゴトン


女子高生が背後に立っている

たくさんのひとが細胞となり

電車に詰め込まれていく


ガタンゴトン


女子高生が背後に立っている

機械人形の顔が窓に映る

がらんどうの瞳と目が合った


ガタンゴトン······


女子高生が私を押しのけて扉に向かう

扉が開いて

細胞を吐き出し始めた


女子高生がホームに降り立ち

ぴかぴかのローファーで闊歩する


ねぇ

泣いてくれない?

泣けなくなった私のかわりに


満員電車は色を失って動き始めた

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る