第11話 ザル警備

―アシン城下町 関所 入り口前―


まさか関所があるとは思わなかった。


城下町だし冷静に考えてみればすぐわかることかもしれない。


逆に無い方が可笑しいだろうけど、自分的には無い方がうれしいかな。


関所にいる兵士に話すのに労力をかけるのがとても面倒だ。


ただでさえ初戦闘で疲れているというのにここで迷っているのはいささか効率が悪いと思う。


兵士は若く、爽やかそうな青年で厳つい様子はない。


これで厳つい老年の兵士だったら反射行動で引き返していたところだ。


既に兵士との距離は約10メートルほどしかないのでここで引き返したとしても不審がられて追いかけられる可能性もある。


他に人がいないのが不審だが気にする必要はない。


言葉が通じるのか、まともに会話できるのか等の疑問を持ちながら兵士の所に歩いて行った。


都合のいいことにあちらから話しかけてきた。


  「この町に来た目的は何かな?」

「は…はた…はた…」

  「旗?旗がどうかしたのかい?」

初対面の人と話せない癖は転生しても変わらないよね。


しかしここは、意地でも言葉をひねりださないと…。


「は…働き口を探すためにここに来ました!!」

  「そっか。頑張ってね、お嬢さん。じゃ、通っていいよ」

「あ、ありがとうございます」


あれ、言葉が通じてるし案外あっさり通れたな。


今のは本当に関所だったのか?ザル警備に感じる。


ていうか、性別間違えられた。この容姿はやっぱり少女なのか。


―アシン城下町 五番区―


さてと、町に入ったのは良いものの思ってたより大きいな。


いや、大きいというより多いか。


建物の密集率、正面の大通りの道幅、そこに展開している出店の数、民の人口、活気等のスケールが都会並だ。


王都だし都会というのは間違いではないが、ここが都会だと考えるのはそれはそれで違和感がある。


あの高層ビル群を見ることがないっていうのは寂しいものだ。


都会で社畜になるはずだったのに、なぜこんなことに。


後悔とかはないが、この保証されてない世界で生きるのは正直遠慮したかったな。


おおっと、いけない。考えることがおかしな方向に向かっている。


まずは冒険者ギルドがあるかどうかの確認とこの町の地図を手に入れなければな。

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