夏葬

始発列車、片道切符

名前も知らない駅、終点までの4000円

空席を私一人で埋めるのはどこかくすぐったい

虚空を抱きしめているような儚い独占

真っ白なワンピース麦わら帽子サンダル

10000円で買った偽物の夏

つまらない景色はきっと私だ

退屈なスピードで街は零れる

終点の無人駅、終わりのエピローグ

狭いホームから見下ろした海は藍に吸い込まれた

怠惰な暑さで寿命を溶かすのも悪くない

腐った脳味噌をラムネに漬け込む午後三時

ビーダマを舌で転がして夏を持て余す

見知らぬ街の夜祭、残響、捨てられた余韻

置いてけぼりの喧騒

暗闇に残るのは夏の抜け殻

花火は黒に萎んで消えた

骸だけが枯れ、海に沈む

そろそろ時間だ

乱雑にサンダルを並べて背伸びをしようか

海風が鬱陶しいのは何故なのだろう

もう使わないから財布は捨てた

溶けたチョコレイトで口を塞ぐ

深呼吸、夏が終わる

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