8 綺羅星堂。星の宝石箱

 お母さん、僕が働くお店【綺羅きらぼし堂】は、街でちょっと変わったお店で、お客さんは隕石メテオライト商店・ストアと呼んで親しんでます。

 店に付いて1つ疑問が。


「なんで……ここだけ壁がエメラルドグリーンなの?」


 アルミの答えは。


「あぁ、ただの虫よけ。虫が嫌う薬品とか混ぜてたら、たまたまエメラルドグリーンの塗料になったのよ」


 周りの家やお店は砂のような茶色なのに、このお店だけ色が派手で目立つ。

 綺羅星堂は、屋根が樽のように丸く、宝箱のように見えるお店。

 板チョコのような扉を開けて、中へ足を運ぶと――――。 


 日当たり良好で暖かみのある室内。

 というより、周りに高い建物がないから、どこの家もお店も日当たりはいいです。

 そのへんは、隕石メテオが降る町は悪いことばかりでもなさそうです。


 煉瓦レンガ作りなのに、ログハウスのような落ち着いた雰囲気の店内。

 天井はロフトになっていて、僕やアルミが住み込んでいます。


 流星を打ち返す以外の仕事は、集めた隕石をお店で売って、綺羅星堂の売上に。


 落ちた隕石には不思議な力があり、生活に役立つ道具として使われます。

 隕石を研磨して加工したり、隕石同士を合成して全く別の素材に変えたり、それはランプやストーブに火を点けたり、電波を発して遠くの人と話をしたりと、それは【ガラダマ】と呼ばれ、町の人々には欠かせない燃料です。


 ちなみに綺羅星堂の天井に吊るしたシャンデリアは、ガラ玉をランプに使っていて、暗くなると自然と発光。

 燃料以外にも、アクセサリーとして売られており、観光でやってくるお客さんのお土産として、喜ばれます。


 トレーに並べられた隕石は琥珀こはく色、翡翠ひすい色、藍色と、色とりどりの宝石のように輝き、水晶のように透明な物もあれば、水晶の中に氷の結晶のような模様が閉じ込められた物も。

 後は「メノウ」と呼ばれる、年輪のよう波紋型模様の商品など、種類は豊富。

 何種類あるんだろ?

 綺羅星堂自体が宝石箱のようなお店です。


 僕は流星打ちが終わると、店内が見渡せるカウンターで会計をしながら、アルミの仕事を見学。


 来店するお客さんは、はしゃぎ回る子供を連れた母親。

 手に取ったガラ玉を食い入るように見つめる、隕石コレクターのおじいさん。

 勉強道具を持った、学校帰り女子。

 様々なお客さんが来店します。


 今、僕と歳が同じくらいの女の子が、店内を見て見て回った後、店員であるアルミにガラ玉について聞こうとしてます。

 なんだか少し言いづらそう。


「あ、あの……す、好きな人と、両想いになれるガラ玉を探してて……」


「だったら、これがいいですよ」


 さすがに、じゃじゃ馬アルミも、接客の時はしゃべり方が変わります。

 花のような笑顔を見せるアルミは、トレーから平べったい板を取って見せた。

 板は屋根のついた家を正面から見たような形で、屋根の形にガラ玉がはめこまれている。

 アルミは商品の丁寧に説明。


「この板に自分と好きな人の名前を書いて、木や神殿の壁に吊るすと、はめ込んだガラ玉が願いを叶えてくれるんです」


「名前を? これなんて言う商品ですか?」


絵馬エマストーンです」


 アルミはお客さんに絵馬ストーンを渡すと、お客さんは手に取った板をマジマジと見つめた後、決断。


「これ、いくらですか?」


 僕はカウンターでお客さんのお金を受け取る。

 石で作られたソロバンで、お釣りを計算して間違えがないか、手元のメダルをよく確認。

 会計が終わると、お客さんを見送った。


 特にお客さんに喜ばれるのは、お守りや願掛け、まじないの効果がある物。

 しょっちゅう流星が降る危険な町だから、不思議な力に頼りたくなるんだと思います。 

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