境界を超えて「彼女」に魅入られる。

 心臓痕硝子は完成された美少女だった。繊細な作り物のように見るものの目を奪うミステリアスな少女はしかし、一年前に突然亡くなってしまう。学校の屋上から飛び降りたとされる彼女。その亡霊がいつしか学校にオカルティックな儀式と結び付いた。「降霊会」で彼女の霊を呼び出すあそび……彼女の「呪い」が学校を支配していく。

 心臓痕硝子という、強烈な個性を放つ存在が楔のように打たれた物語です。彼女は死んでいるはずなのに、「呪い」によって未だに畏怖され噂となり、生き続けている。硝子を視ることができるいたみとのやり取り、謎を掛け合わせることで深みが増していく関係性、そのどれもが魅惑的な世界観を見事に表現しています。どんな形であれ、心臓痕硝子という存在に心をとらわれていく。そんな人間たちが回していく物語から目が離せません。

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