番外編『鍵穴のエルフ キャスカ・ロングウェイ』#18

 私達以外、誰も動かなくなった店の中で彼女に頼まれて靴を拾いに行った。いくつもの血溜まりと硝煙の臭いが混ざり合って、それはそれはきな臭い臭気が充満している。拾い上げた靴は銃弾で穴が空いており、普通の足ならこれ以上履けそうにない。



 彼女は靴を受け取ると、煙をあげる右足から煙が出ているのに気づき、顔を赤らめながらズボンを引き裂いた。そこに生身の足はなく、代わりに無骨な短機関銃が仕込まれていた。随分と簡素な作りだけれど、義足として使えるように、銃口の先に太いワイヤー状の覆いがついている。



「火がついてしまうところでしたわ」


 頬を上気させながら彼女は私にウィンクする。それがどうにもいやらしくて、私も真っ赤になってしまう。くすりと微笑んだ彼女は、足に手をかざす。緑色の灯りが、そこから漏れている。



「魔法も使えるんですか」


「うふふ。学校に行っていた時は、赤点でしたのよ。今ではそのへんの村医者より自信がありますわ。……あなたの力も貸してくださる?」


 私は彼女の生身の手を握る。こうすることで、私の体内の第五元素、いわゆる魔力を彼女と共有することができるのだ。



 あぁ……と悩ましげな吐息を漏らしながら、彼女は受けた傷を癒やす。あっという間に、骨は肉で隠され、皮膚が浮き出てくる。私は同時に、くらっとした。それを彼女が優しく受け止めてくれた。

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