海蘊 藻屑

浜辺

廃ビル群は、砂浜からはるか遠くの海面に灰色の顔を出している。

夜が来ると、海中に続く建築物の窓に無数の明かりが灯るのが見えた。


私はその光景を見るのが好きで、晴れた日は授業が終わるとよく校舎裏の防砂林を抜けて砂浜へ行き、日が暮れるのを待ちながら本を読んで過ごした。

ぬるい風が私の伸びた髪を揺らし、湿った砂が制服のスカートの裾にまとわりついた。

私の足元で波が砂を洗う音だけが絶え間なく鳴っていた。


空の色が橙から濃紺に変化する頃、黒々と泡立つ波の向こうにぽつりと黄色い光が現れる。

波の中に揺らぐ光は時とともに数を増していき、夜が砂浜を覆う頃には暗い海の中にぼんやりと街が見えるのだ。


それを見るといつも私は、その窓のどれか1つにいるパパとママのことを思った。

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