凶夢

みや

 ――阿片で見る夢は、いつも甘い。


 辛い現実がどろどろに溶け、甘い夢になる。それが、私を酔わせる。

 そんな夢に、私はいつも酔っていたい。


 最近、どれが現実で、夢なのかがわからなくなってきている気がする。

 でも、いい。

 現実は辛すぎるから。

 いつも、いつも、甘い夢に酔っていたい。


「何が、真実だったのかしら?」

 私はつぶやく。

 甘い煙を吸い込みながら。


 清朝最後の皇后と呼ばれたこと。

 その夫は、実はほかの女のほうを先に選んでいたこと。

 廃位されたこと。

 夫がほかの女と離婚したころから、体面を気にする夫は、私を邪険に扱うようになったこと。

 ――。


「どれが、真実だったかしら?」

 私は思い巡らせながら、呟く。

 傍らの男は、私の呟きを聞いても何も言わない。

 ただ、私の手から阿片を吸っていた筒を取り上げ、私を抱きしめた。


(この男は、誰だったろう――?)

 夫?

 皇帝?

 それとも――?


 もう、何もわからない。

 ただ、幸福な気持ちがあるだけ。


 そう感じる一方で、わかっている。

 この夢がさめたら、辛すぎる現実が戻ってくることを。


 でも、でも今だけは。甘い夢に酔っていたかった。

 今だけでも――。

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