選んだ道

第11話 怒り


 美希を送り出し、沙羅は一人になった。


 美希は、母親に永遠の別れを告げることを選んだ。

 身も心もボロボロで、誰にもすがれない。そんな中でも、やらなければいけないことを決断した。

 延命装置を外した後、どのくらい生きられるのかわからない。最後の時を、二人で静かに過ごすだろう。


 美希は自分の心に向き合い、本当の自分を見つけた。

 

 私はどうなのだろう。何も感じなくなっていた私の心は、本当は何を感じているのだろう。


 戦乱に明け暮れる国に、人の尊厳を踏みにじる奴らがいた。

 平和な国にも、人の尊厳を踏みにじる奴らがいる。


 どんなに悲しくとも泣くことは許されなかった。

 どんなに悔しくとも耐え忍ぶしかなかった。


 悲しい時に涙を流す。そのことを、美希のおかげで、思い出すことができた。


 もし、自分がひどい目にあっても、ただ耐えて生き延びることだけを考えたかもしれない。

 しかし、今、美希が受けた理不尽な仕打ちを前にして、長い間忘れていた、もう一つの感情を、沙羅は見つけた。


 怒りに打ち震えている自分の心を。

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