魔王の企み

第13話 魔王のセーブ7

果たすべき責任の重みを再確認した俺は


今、我がリベリオヌス家の会議場にいる。





とはいえ大した遺産もなく、そもそも先代からキリキリの生活を強いられていた


城を更に改築するために資産を切り詰めたので、


会議室と呼ぶにもうちは狭い。





だからと言って何の問題も無い。


なんせ我が会議に出席するのは








「よくお集まり頂きました、お三方」








そうアトリックが司会を務め、紹介したのはたったお三方。





先ほどの研究チームリーダー・ウェイズ





白兵戦専門の武等派軍団隊長・ブルーナ





魔戦後方支援部隊長・フェルン





この三人しかいないのだ、うちの幹部格は。








「して魔王様、知らせをくれれば済むことをわざわざ集会にした

 理由は何ですかな?


 研究を切り上げてこちらに来ているんですがねぇ...」





ウェイズはいつも通りの調子を取り戻して、嫌味を言ってくる








「良いじゃねえか、そんなに急いで出来るもんでもねんだろ?

 良いご身分だよなぁ」








そういうのは武等派をまとめる実戦部隊隊長のブルーナだ。


種族はダークエルフで、女戦士だ。


それでありながら基本の戦い方は荒々しく、


オーガやオークにも負けないパワフルさは

危険な前線部隊を任せるには十分な逞しさだ。








「いけませんよ、

 ウェイズさんは今大変重要な研究に勤しんでいらっしゃるんですから」








そう諭すのは前線で伐り合う実戦部隊を後方から支援する、


魔法専門に戦闘を撹乱させるチームのキャプテンのフェルンだ。





種族はシルキーで、


彼女は第二次魔聖戦争で殺されてしまったメイドなのだが、


強い怨念が

彼女を妖精でもありアンデッドでもある幽体として現世に留めたようだ。





そこから彼女の器用さを買って、


妖精になったことによる

魔力量上昇に伴って多彩な魔法を使えるようになったことを機に、


うちのわずかな兵力の内に有力な者もいないので


魔戦部隊のトップを任せた。








「ええ、皆様変わらずにお元気で結構でございます」





アトリックが二者が睨みあい、


一人が諭している状態を和気藹々だと受け取って


ニコニコして強引に話を進めようとする。





こいつもズレているところがあるが無論優秀だ。


なぜうちの軍団はこう一癖二癖ある奴らなのだろうか......








「さて、では陛下。


 ご用件のお話をお願い賜ります」





やっと場が静まって視線がこっちに向いた。





「ふう...まあ皆、いつも通りの様子で俺も安心した。


 では重要なこれからの我がリベリオヌス家の方向性について話合いたい。」





浮ついた空気に水を打ったような静寂と緊張感が走った。





「大騒ぎになっていたからブルーナとフェルンも気付いていると思うが、


 我々は魔界でも知れ渡っていない新情報を握った」





それに二人が少し眉を動かした。


詳しくはまだ全員に行き渡っていないようだ。





「奴らは経験値と呼ぶが、この経験値が勇者から奪うことによって


 我々の役に立つ可能性が弾き出された。


 その状態の経験値のことをズィーラと呼ぶことにしよう。


 奴らの経験値とは対を成すものとして」





ウェイズが腕を組んで自慢げに頷く。










「そしてこのズィーラを、近々開かれる魔王集会で公表する。


 そこからが俺達の進展の始まりだ」

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