第六話『崩壊はキミの夢を見るか』

会話碌6



「キミに聞いておかなければならないことが有る。そもそも、スパルトイとは何なのか」


 薄暗い尋問室の中で、机の上の小さな灯りを挟んで、所長代理ヴィルヘルム・フランケンシュタインは、少女に問うた。


「スパルトイは……んー、人間の悪い部分を表面化させてるのさ」


 少女はこともなげに言う。余ほど暇なのか、尋問室の床に仰向けに寝そべりながら話をしている。


「人間は、良い人も居る。でも良い人でもつい魔が差すことはある。それを増幅させるようになってるんだ。そういう作りの兵器なのさ」

「なるほど。だが、それが全てのスパルトイに効果を発揮していないのはなぜだ? スパルトイごとに個体差があるように思える。性格などが、だな」


 少女は寝返りを打ってうつ伏せになり、両腕で頬杖をつく。少し悩んでから彼女は答えた。


「あー、んーっと……その辺は、作成したハルモニアの影響じゃないかな?」


 ヴィルヘルムは少女の言葉に疑問を被せる。


「ハルモニアの影響? それはどういう意味だ?」

「彼女はね、スパルトイを、完全に心の無い兵器に出来なかったんだよ。それがあまりにも……彼女には辛いことだったんだ」

「何故だ? 人類の虐殺が目的の兵器なら、個体差や感情など邪魔なはずだろう?」


 少女は頬杖をやめ、頬を床に付けながら言う。ヴィルヘルムからは彼女の顔が見えない。


「彼女はね、彼女の大事な人の心を取り戻す研究をしてたんだ」


 ヴィルヘルムは自分の言っている言葉が正しいか疑いながら彼女に言う。


「彼女、とは……ハルモニアの事でいいのか?」

「うん。あの子はボクより乙女な、だとボクは思うな」


 ハルモニアはじゃないか、とはヴィルヘルムは言わなかった。目の前にいる少女もハルモニアと同じ種族なのだと思えば、言わない方が良いだろうと思ったからだ。

 ヴィルヘルムは更に質問する。


「それで、あー……彼女、が恋をした相手とは、誰だ? “君たち”の誰かなのか?」


 少女から、笑い声が上がる。ヴィルヘルムからは彼女の顔は見えないが、何か言葉をのだと、直感で感じた。

 少女は言う。


「ああ、大丈夫。気にしないで。まぁ、キミたち人類って、あるよね」


 少女は体を起こして床に胡坐をかいて座り直して言う。


「ハルモニア、彼女はね、“神の兵器”の心を取り戻したかったんだ。そのために、“神の兵器”……として、を生産したんだ」



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