零章 とある少女の変化 3

 最後に男は私を町へと送り届ける道中、話をしてくれた。


「良いかい、嬢ちゃん。森には二種類あるんだ」


 優しそうな声なのに、助けて貰ったときの様子を思い出して、うまく声が出ない。


「それはね、良い動物が守る森と、悪い動物が守る森だ。ここは俺みたいな、悪い狼が守る方。だから、もう入っちゃダメだぜ?」


 川のすぐそばで別れた私は、なんとなく森へと消える狼の彼を見ていた。


 狼は悪役。おとぎ話は、いつでもそう。

 もし、あの人も悪い狼というのなら、きっと、森がそうしているのだろう。悪い動物が守る森にいるから、彼も悪い動物になってしまう。

 漠然とそんなことを考えていた。


 私はその森が嫌いになった。

 良いものを隠してしまうのは悪いことだ。そんな森は大嫌いだ。


 私は決意した。いつか、この森を燃やしてやろうと。

 そして、高かったテントも取り返すんだと。

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