第28話

一方一行は・・・


よろよろ歩くドトウに合わせて、バドもゆっくり歩いている。

メラ・メイチ・カイトはバドの背中に乗っている。

「そんなに凄いおならだったの?」

メイチは興味津々だ。

「ありゃ、臭いなんてもんじゃなかった。毒ガスだよ。おならをした本人が気絶するなんて、今まで聞いたことがない。そもそもイタチの最期っ屁ってのは、敵を追いかけられないようにして、自分が逃げるための手段だ。それを本人まで気絶するなんて身を守る手段でもなんでもない。特殊能力ってのは、動物の為に作ったんじゃなくて、動物を人間の道具にする為に作られた力なんだろうな。そう思うと人間の恐ろしさを感じたよ。」

「人間は動物の健康や暮らしやすさの為に研究してるんじゃないの?」カイトはびっくりした表情で話した。


「そんなことあるわけないでしょ。人間は動物を使って人間用の薬の実験をしたり、人間が食べる為の成長の早い動物を作ったり、人間が人間を殺す為の動物を作ったりするのよ。」そう言って突然、三毛猫がバドの背中に飛び乗ってきた。

メラ・メイチ。カイトは急に緊張している姿を見てバドは言った。

「大丈夫、その猫はゴフ。僕と一緒に山本さんに飼われているんだ。ゴフは山本さんの家に入って一緒にテレビとか見て、人間の事には詳しいんだ。生の生き物を食べる習慣はないから心配しないで。」

「人間を殺す為の動物!?動物が人間を殺すの?なんで?確かに森を壊して住処を奪われたり、突然逃げ場のないような時は、人間と戦う事はあっても、人間の命令で戦ったり、殺すなんて事はないよ。

だいたい人間の言うことを聞こうなんて思ったこともないし。

なんで、人間の命令なんか聞くんだろう。」

ゴフは悲しそうな表情で言った。

「それは、心を奪うのさ。」

「心?」

「そう、人間は相手が動物だろうが人間だろうが、相手を言いなりにコントロールする為に、暴力や飢え、大切なものを人質にして相手の心を奪うのさ。もっと恐ろしいのは遺伝子と薬だ。

人間は動物に自然ではありえない能力の動物を作り出し、薬を使って思いのままにコントロールする。」

カイトはゾクッとした。


「それで、心を奪われた人間や動物はどうなるの?」

「使うだけ使って、役に立たなくなったら、捨てられるのさ。人間だったら、殺される事はないけど、動物だったら経済性とか言って殺すことも平気なようだよ。」

カイトは食い入るようにゴフを見つめている。

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