第14話 命のかけら



 今日行った町で、長い間封印されていた魔人。


 魔人は、大昔に戦いで敗れて、今まではなすすべもなく時の牢獄に入れられていた。だが、ある日自由になるための手段を見つけてしまう。


 恐ろしい魔人は、ただ人間にいいように封印されているだけではなかったのだ。


 その魔人は封印のほころびを見つけて、自分の命をいくつかのかけらにして分けて、外に放った。


 命のかけらには、魔人の復活をさせるための命令を刷り込んでおいて。


 それらのかけらは、人間の赤ん坊に宿り、すくすくと成長する。

 その者達は贄と呼ばれた


 最初に成長した人間は、魔人を復活させるために大きな組織を作り上げた。


 そして、各地で様々な伝承や、儀式について調べ上げ、とうとう魔人を復活させる方法を見つけてしまった。


 魔人復活の決行の日が近づいてきたある日、彼らは各地にいる贄を集めることにした。


 それで、命のかけらを宿したシオンにもその情報が伝わったのだ。


 贄となって死ぬために。


 シオンがいつから、贄としての自覚をもっていたのかはわからない。

 いつから魔人復活の組織とつながっていたのかも。


 けれど、シオンは泣いていた。

 今までの事はどうあれ、彼女は今は嫌がっているのだ。


 だったら、とめてやらなければならない。


 シオンがいるのはここだ。俺達のいる屋敷だ。

 ぽっとでの魔人の元でも、よくわからない組織の中でもない。


 俺がシオンを連れ戻してやらなければ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る