第11話 封印されし存在



「まさか、あのディネーラ家のラックス様でしたとは、とんだご無礼を」

「もうそれはいいから」


 シオンと男の間に生じた誤解を解いた後、すっかり委縮してしまった相手に話を聞くのは気が引けるが、騒ぎの原因が気になる。


 シオンが止める気配がないのを見て、俺は事情をたずねた。


「で、なにがあったんだ?」

「実は……」


 男が語ったのは、驚くべき話だった。


「魔人が復活した? それは本当なのですか?」


 シオンが信じられないといった様子で尋ね返すが、男は首を縦に振るのみ。


「そうですか。そんな大変な事が」


 なんでも、この近くにある祠が壊されていたらしい。

 その祠は、数千年前に封印された伝説の魔人がいたのだが、誰かが壊してしまったのだとか。


 犯人は分からない。

 厳重な警備があったにも関わらず壊されてしまったところをみると、そこらのチンピラの仕業ではないという見立てだが、それ以上のことは分からないようだった。


「それがほんとうならたいへんなことだ」

「ええ、そうですね。はやくもどりましょう」


 もう少しこの町を散策してみたかったが、そんな危ない存在がうろついているかもしれないとあれば、無理だ。


 おとなしく屋敷に帰って、父や母に報告しなければならないだろう。


「あの、ディネーラの方達は……」

「だいじょうぶだ。ちちうえは、ひとびとをみすてたりはしない」


 不安そうな様子の男にそう言って、俺達は行きに乗ってきた馬車へ急いだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る