第9話 珍しい本



 町のあちこちを眺めながらシオンと共に、本屋へと向かう。

 貴族のお坊ちゃんが来ても良いような作りの店で、こじゃれた外観と内装が良い雰囲気を出していた。


 見栄を張るでも、安っぽく見えるでもない、本を読むにはちょうど良い落ち着いた室内の中をぐるっと歩き周りながら、本を見ていく。


 家には置いてないジャンルの本がたくさんあって、本好きではないものの、かなり興味をひいた。


 これから外出の機会が増えていくとはいえ、まだまだ俺は子供だ。


 基本的には家の中での生活が中心のままだろうから、興味のある本はいくつでも買って帰りたい。


「しおん、なんさつぐらいかってかえれる?」

「そうですね。ご主人様からは、お坊ちゃまを甘やかさないように言われていますから……。三冊くらいが上限ですね」


 三冊かぁー。


 ちょっと少ない。

 でも、それでも買えないよりはよっぽどいい。


 シオンと相談しながら、どんな本が良いのか候補を決めていく事にした。


「ラックス様、これなどはどうでしょうか」

「うん、それもいいな」


 とりあえずあまり難しくない基礎的な内容の本を見繕っていく。


 そんな中で少し変わった本があった。

 白紙の本だ。


 パラパラとページをめくってみるものの、どこのページにも何もかかれていなかった。


「なんだこれ。へんなほんだな」


 何も書かれていない本なんて、本として表現していいのだろうか。

 とはいえ、その本が本として店に並んでいるのは事実。

 何かしらの意味があるのだろう。


 俺はシオンと相談して見繕った本の三冊を購入する事にした。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る