第5話 初めての仕事

流石に夜からの仕事はキツそうなので、朝を待ってギルドに来た。

昨日は人が少なくて、あんまり分からなかったけど、受ける仕事も水晶玉で検索するらしい。

みんな椅子に座って、水晶玉に手を触れている。

空いてる席を見付け、水晶玉に手を触れると目の前に文字が浮かび上がってくる。

その文字をポチポチと触れて検索する。


おぉ、すげぇ。便利だ。ハイテクだ。

お使いクエストが多いな。平和でいい事だ。でも僕が探しているのは討伐クエスト。

ジャンルを切り替えてみると、数件出てきた。


大ネズミの駆除。トゲ猪の退治。盗賊の撃退(生死問わず)

色々あるな。

初心者用のは聞いて知ってるから、それを選ぶ。


クエスト、歩く雑草の駆除を選択した。


場所は、街から少し離れた畑。その畑に現れるモンスターを駆除する仕事だ。

歩く雑草は、根っこを器用に使って歩く雑草。そのまんまなモンスターだ。

どうして駆除対象かと言うと、居心地のいい場所に居座って、土の養分を吸い付くしてしまうから。

正しく雑草です。


歩く事、数10分。目的地に到着。


『おぉ、アンタが冒険者か?頼むわ。』

クワを振るいながら退けようとしているが、意に介さずに畑に近づく雑草。

どうやら、依頼主の様だ。


「早速、やってみます。」

僕は短く答えると、走りながら街で買っておいた剣を振るう。

ザックリとした手応えは、あったものの雑草は元気に迫ってくる。流石に雑草だ。生命力が強い。

何度も何度も斬りつけて、やっと1体を動かなくする事が出来た。


「はぁはぁ。やりましたよ。」

依頼主らしき人に言ったが、呑気にお茶を飲みながら


『1体な訳ないだろ?ほれっ、まだまだいるぞ。』

顎をしゃくって示す先を見ると、確かに数体の雑草が向かってきている。


くそっ、命の危険はなさそうだけど、これはキツい。

早々と能力を使う時が来たみたいだ。あんまり使いたくないんだけどな。


【金は力なり。発動。10S分の身体能力向上】

能力とは、お金を使ったドーピングだったのです。

ふっと体が軽くなり、一気に雑草へ近づき連続で斬る。スピードも力も、さっきより上がっている。

でも、それでも一撃づつは致命傷とは遠いらしく、さっきの討伐スピードより、やや早くなっただけ。

ケチり過ぎた様だ。


結局の所、追加で15Sを支払ってドーピングを行って、やっと全て倒した。



「はぁ、ぜぇ、はぁ、はぁ。やりましたよ。」

肩で息をしながらも、依頼主へ報告。


『あぁ、見てたから知ってんぞ。にぃちゃん、お疲れ。じゃあ、依頼金の50Sだ。ほれっ。』

そう言って渡された銀色の硬貨5枚。

宿代2日分だったのに出費で、1日分に減ってしまった。

この能力って、本当にチートなの?

割に合わない気がする。

他の使い道が思い付かない現状は、この使い方しか無いように思う。

やるしかないか。



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