シリーズ全体④ ボツ中編:失われた王国と、魔法使いの弟子

 ボツになった中編の話。


 長編の失敗から、「風呂敷を広げすぎない」方向に考えた結果、「魔法使い(青年)とその弟子(幼女)が森で暮らす日常モノ」が書きたいと思うようになった。これならコンパクトに収まるし、楽しそう。


 ちょっと浮世離れした魔法使いの男性と、おしゃまでかわいいが不器用な女の子の弟子。

 試しに書きはじめてみると、魔法は使えるが生活力のない師匠に対して、弟子のほうがというふうになってしまった。たぶん、「生活力のない師匠を『しょうがないわねぇ私がいないと』と家事力でサポートするヒロイン」というのが、ちょっとだと思ったのだろう。


 叱られても右から左にお小言が抜けていくような弟子の幼女が、たくましくてなかなかかわいい。師匠のほうも、人づきあいを面倒くさがったり話が長かったりするところがあり、とぼけた味わいで面白いと思った。

 ときおり、魔法使いの昔の知り合いが訪ねてくることもある。にこにこと愛想のいい好青年なのに、ぶっそうな二つ名があるらしい。女の子の生まれたときのことを知っていて、どうやら彼が、彼女を魔法使いのもとに運んできたらしい……。


 なかなか面白そうだと思った。


 さて、そうなると、「なぜ魔力ゼロな上に家事も苦手な女子を弟子にしているのか」が謎になってくる。ノートを前にいろいろ書きだしつつ考えた結果、「昔の因縁」で行くことにした。こんな感じ:

・魔法使いは、もともとは宮廷づき魔導士だった

・その国の女王とは、微妙にラブもあったが、政敵でもあった(王VS魔法使い組合ギルド的な)

・クーデタで国が滅び、女王はなぜか政敵だった魔法使いに娘を託した


 というバックストーリー(本編の前段階にある、主人公とかかわりの深いストーリー)を考えた。それにつけても私は政敵が好きすぎる。


 だいたい12万字くらいの中編として書きはじめたのだが、結局は完成しなかった。

 ひとつは似たような設定のすごく面白い漫画を見つけてしまった(明治カナ子の『坂の上の魔法使い』)のと、ほのぼの日常ネタをあまり思いつかなくて、プロットを立てたあと2~3話を書いて、やめてしまった。どういうお話なら完結まで書き続けられるのかというのは、自分の場合、書いてみるまでわからない部分もあるようだ。


 リアナシリーズを作るときに、この中編も吸収され、主人公リアナと養父イニのお話になった。キャラクターとしては、イニとリアナのほかに、フィルに近い動きの人物もいる(フィルは、エリサ王の依頼で誕生後すぐのリアナをイニのもとへ運んだことがある。第三部参照)。


 また、前述のバックストーリーは、そのままリアナの親世代のお話の元になっている。

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